動態保存中の蒸気機関車

動態保存中の蒸気機関車：日本のSLと世界の動態保存

蒸気機関車（SL）の動態保存とは、走行可能な状態で保存し、実際に運転を行うことを指します。日本のSL動態保存の歴史は、1976年、大井川鐵道での保存運転に始まります。以来、多くのSLが動態保存され、観光資源として活用されていますが、同時に維持管理や人材育成といった課題も抱えています。近年は、環境問題への配慮から、代替燃料の試験運転なども行われています。

各鉄道会社における動態保存

JR北海道

JR北海道では、1988年にC62 3号機の復元が最初でした。その後、ボランティア団体による運行を経て、JR北海道がC11形を2両動態復元。しかし、整備や資金難から1両は東武鉄道に貸し出され、現在はC11 171号機が「SL冬の湿原号」などで活躍しています。

JR東日本

JR東日本は、1987年の発足当初はC58 363号機（のちに秩父鉄道へ移籍）のみを保有。その後、複数のSLを動態復元し、上越線、信越本線、磐越西線などで定期運転を実施しています。代表的なSLとしては、「SLぐんま」（D51 498）や「SLばんえつ物語」（C57 180）が挙げられます。2023年までは「SL銀河」（C58 239）も運行されていました。

JR西日本

JR西日本は、京都鉄道博物館（旧梅小路蒸気機関車館）を継承し、複数のSLを保有。本線運転可能なSLはC57 1号機（「SLやまぐち号」）と、2017年から本格運用を開始したD51 200号機です。C57 1号機は、国鉄・JRにおけるSL保存運転のさきがけ的存在で、近年も大規模な改修が行われています。

大井川鐵道

大井川鐵道は日本のSL動態保存のパイオニアであり、最盛期には8両を動態保存していました。近年は資金難や老朽化で一部車両は静態保存に移行、または長期休車となっていますが、2025年の春にはC56 135号機の運行再開が予定されています。また、アニメ作品とのコラボなど、他社にはない独自の取り組みも展開しています。

その他の私鉄

真岡鐵道はJR東日本の協力で2両のSLを動態復元しましたが、現在はC12 66号機（「SLもおか」）のみが運行されています。秩父鉄道はJR東日本から譲受したC58 363号機（「SLパレオエクスプレス」）を運行し、東武鉄道はJR北海道や真岡鐵道から譲受したSLに加え、自社で復元したC11 123号機（「SL大樹」）を運行しています。

動態保存から静態保存に変更されたSL

老朽化や資金難、技術者の不足などにより、動態保存から静態保存に変更されたSLも多く存在します。JR北海道のC62 3号機やJR九州の58654号機などがその例です。

施設内動態保存

テーマパークや博物館などでは、園内を走るSLの動態保存も盛んです。北海道の丸瀬布森林公園いこいの森や三笠鉄道村、小樽市総合博物館など、各地で様々なSLが運行されています。中には、圧縮空気で動態保存されているSLも存在します。

新造蒸気機関車

新たに製造されたSLも存在します。希望の森公園、スカイピアあだたら、むさしの村など、各地で運行されていますが、これらは「保存運転」とは異なる性格を持ちます。

海外の事例

アメリカ合衆国では、ノーフォーク・アンド・ウェスタン鉄道611号機、ユニオン・パシフィック鉄道844号機など、多数のSLが本線で運行可能な状態で保存されています。他にも、保存鉄道やテーマパークなどで多くのSLが動態保存されています。

まとめ

日本のSL動態保存は、技術的課題や資金面の問題、そして環境への配慮など、様々な要素が絡み合う複雑な取り組みです。しかし、その魅力は多くの人を惹きつけ、観光資源としての価値はますます高まっています。今後の動態保存の取り組みが、SLの歴史と文化の継承に大きく貢献することを期待しています。

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