あっち向いてホイ

あっち向いてホイは、二人で行う、じゃんけんから生まれた派生ゲームです。特別な道具は一切必要なく、その場で手軽に始められるため、子供から大人まで幅広い世代に親しまれています。

遊び方の流れ

まず、プレイヤー二人が通常のじゃんけんを行います。じゃんけんの勝敗が決まったら、ゲームの主導権は勝者に移ります。勝者は「あっち向いてホイ！」と声を掛けながら、上、下、左、右のいずれか一方向を指差します。

一方、じゃんけんに負けたプレイヤーは、勝者が指差した方向を素早く認識しつつ、それとは異なる方向、つまり指差された方向の逆側へ、自分の顔を向けなければなりません。顔を向ける方向も勝者と同様に、上、下、左、右のいずれか一方向です。

勝敗の決定

じゃんけんに勝ったプレイヤーが指差した方向と、じゃんけんに負けたプレイヤーが顔を向けた方向が、一致した場合は、指差したプレイヤー（じゃんけんの勝者）の勝ちとなります。この時点で一連のゲームは終了です。

もし、じゃんけんに勝ったプレイヤーが指差した方向と、じゃんけんに負けたプレイヤーが顔を向けた方向が一致しなかった場合は、勝敗は決まりません。ゲームは続行となり、再びじゃんけんからやり直します。このように、「じゃんけんポイ！」「あっち向いてホイ！」というリズミカルな掛け声と共に、じゃんけんと指差し・顔の向きの応酬が繰り返されます。指差した側が勝利するか、あるいは特定の時間内に負けた側が顔の向きを合わせなかった場合などもゲーム終了となることがあります。

派生ルール：こっち向いてホイ

あっち向いてホイのルールを逆転させた「こっち向いてホイ」という派生ゲームも存在します。このルールでは、じゃんけんに勝ったプレイヤーが指差し、負けたプレイヤーが顔を向けます。しかし、勝者となるのは、指差した方向と顔を向けた方向が一致しなかった場合です。もし方向が一致してしまった場合は、勝敗は決まらず、再びじゃんけんからやり直すことになります。

歴史とメディアでの広まり

このゲームの起源は、京都の祇園で行われていたお座敷遊びに遡ると言われています。その後、落語家の六代桂文枝師匠（当時の高座名は三枝）がテレビ番組で紹介したことをきっかけに、花柳界以外にもその存在が知られるようになりました。

特に、1970年代にはコメディアンの萩本欽一氏が、自身が司会を務める人気オーディション番組『スター誕生!』の中で、審査結果発表までの時間を利用した場つなぎのコーナーとしてこのゲームを取り入れました（この際は「こっちむいてホイ!」の掛け声が使われていた時期もあるようです）。これが全国的な知名度を獲得する決定的な契機となったとされています。

その後も様々なテレビ番組で活用され、遊び方やルールにアレンジが加えられることもありました。例えば、『NTV紅白歌のベストテン』の企画でプール上の一本橋の上で行われ、負けた歌手がプールに落ちる罰ゲームとして利用されたり、『プロポーズ大作戦』ではゲストが街頭で行う企画になったりしました。また、1996年の年末特番では、長時間にわたってこのゲームだけを延々と行うという異例の企画も実施されました。アニメ番組のエンディングテーマやデータ放送と連動したゲーム企画としても取り入れられるなど、その活用方法は多岐にわたります。近年では、NHKのマスコットキャラクターであるどーもくんや、「チコちゃんに叱られる!」のチコちゃんが、番組のエンディングで視聴者に向けてこのゲームを行うなど、現在でもテレビを通じて多くの人々に親しまれています。

脳科学的視点からの研究

あっち向いてホイという遊びは、単なるゲームとしてだけでなく、人間の認知機能や脳の働きを探る研究対象ともなり得ます。例えば、相手の指の動きという視覚情報につられることなく、意図的にそれとは逆方向に顔を向けるという動作は、脳における衝動を抑制し、視覚情報とは異なる運動指令を出す機能（衝動性眼球運動など）と関連があると考えられています。北海道大学の研究チームは、この動作において脳の視床という部位が重要な役割を果たしている可能性を示唆する研究結果を発表しています。このように、シンプルながらも奥深い側面を持つ遊びと言えるでしょう。

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