あなたなしで

あなたなしで

「あなたなしで」（原題：Trying to Live My Life Without You または Tryin' to Live My Life Without You）は、1972年にアメリカで発表された楽曲です。作詞・作曲はユージーン・フランク・ウィリアムズが担当しました。

概要

この楽曲は1972年に誕生し、ソウルシンガーのオーティス・クレイが最初に歌い、人気を獲得しました。翌1973年初頭には、ビルボードのバブリング・アンダー・チャートで102位にランクインしています。その後、数多くのアーティストによってカバーされており、特にボブ・シーガーが1981年のアルバム『嵐の呼ぶ声』に収録したバージョンや、ブリンズリー・シュウォーツによるカバーなどがよく知られています。オーティス・クレイ自身も、1973年2月17日にアメリカの有名なダンス音楽番組『ソウル・トレイン』でこの曲をパフォーマンスしました。

日本国内においては、この楽曲には複数の邦題が存在します。JASRAC（日本音楽著作権協会）に登録されている公式な邦題は、浅川マキによる「あなたなしで」です。しかし、オーティス・クレイのバージョンは「愛なき世界で」として、ボブ・シーガーのバージョンは「暴走マイ・ライフ」として知られています。

歌詞の内容

歌詞は、別れてしまった恋人に語りかける男性の視点から展開されます。語り手は、自らの生活が乱れている様子を描写し、例えば一日にタバコを五箱吸い、ワインを何本も空けてしまうといった、身についてしまった悪習について赤裸々に語ります。プレコーラスでは、こうした以前からの悪癖を断ち切ること自体も困難であると認めつつも、それ以上に、愛した相手や共に過ごした日々を忘れることの方がはるかに難しいことだと、切ない胸の内を吐露しています。

ボブ・シーガーによるカヴァー

ボブ・シーガーによるカバーは、この楽曲のバージョンの中で最も商業的に成功したものとして知られています。ポップシングルチャートで最高5位を記録する大ヒットとなりました。このバージョンは、印象的なベースラインに加え、曲の冒頭に挿入されるシーガーの語り――「オーケー、君たち、今夜はファンキーな気分なんだね？...これは古いメンフィスの曲だよ、古いメンフィスの曲…」――でも有名です。アルバム『ナイン・トゥナイト』のライナーノーツには、彼のバンドのサックス奏者、アルト・リードがこの曲の全てのサックスパートを同時に演奏したという逸話が記されていますが、これは恐らくライブ演奏にスタジオでの多重録音を重ねた結果だろうと推測されています。

浅川マキによるカヴァー

日本では、1976年にシンガーソングライターの浅川マキが、自身のアルバム『灯ともし頃』でこの曲を取り上げました。彼女自身が日本語詞を手掛け、歌唱しています。歌詞はオリジナルの持つ世界観、例えば「煙草は五箱で今日も吸ってしまうし」といった表現を踏襲しつつも、「コップ酒」が登場するなど、浅川独自の解釈と表現が加えられています。

このレコーディングには、若き日の坂本龍一、白井幹夫、つのだひろ、向井滋春、近藤俊則、萩原信義といった日本の著名なミュージシャンたちが参加しました。録音は西荻窪にあるジャズ喫茶『アケタの店』にて、あたかもスタジオライブのような雰囲気で行われたとされています。このスタジオ音源は、1993年3月3日に初めてCDとしてリリースされました。

浅川マキによるこのバージョンは、2018年現在、通信カラオケのDAMに収録されています。当時の編曲や演奏が再現された音源で楽しむことができ、DAMの公式サイトに会員登録すれば、このバージョンの日本語詞を閲覧することも可能です。

また、1977年11月19日と20日には、京都大学西部講堂で開催されたライブ『京大西部講堂 Vol.3 浅川マキ　ライブ “夜” 』にて、この曲が披露されました。このライブの模様は記録され、翌1978年2月5日にはライブアルバム『浅川マキ・ライヴ・夜』として発表されています。ちなみに、このライブ音源はスタジオ録音盤よりも早く、1990年12月19日にCD化されています。

備考

2018年時点のJASRAC（日本音楽著作権協会）の登録情報によると、この曲は外国作品として扱われ、作品コードは0T1-0148-7、原題『TRYING TO LIVE MY LIFE WITHOUT YOU』で登録されています。JASRAC上では、合計9組のアーティストがこの曲を歌唱した者として登録されています。オリジナル版の音楽出版者はHAPPY HOOKER MUSIC INC.であり、日本国内におけるサブ出版はシンコーミュージック・パブリッシャーズが担当しています。

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