あるがままに

角松敏生10作目のオリジナルアルバム『あるがままに』は、1992年7月1日にリリースされました。彼のこれまでのアルバムは全て英語タイトルでしたが、本作は初めて日本語タイトルが採用された点が大きな特徴です。

このアルバムは、角松敏生が活動を一時休止する前の最後のフルアルバムという位置付けでもあります。そのため、ファンにとっても、アーティストにとっても重要な作品と言えるでしょう。

アルバム収録楽曲の中には、既にシングルとしてリリースされていた楽曲も含まれています。「夜をこえて」は、シングルバージョンとは異なるアレンジで収録されています。シングルバージョンでは打ち込みドラムでしたが、アルバムバージョンでは生楽器によるドラムに差し替えられ、より力強く、繊細なサウンドに仕上がっています。また、「君を二度とはなさない」も、アルバム収録後にシングルカットされました。こちらは、アルバムバージョンにドラムソロが追加されたバージョンがシングルとしてリリースされています。

特筆すべきは、「君がやりたかったSCUBA DIVING」でしょう。この曲には、角松敏生が海中で体験したという「無音の音」を再現した、独特の効果音が使用されています。ブックレットには、この効果音について「本製品および再生機器などの故障ではありません」という記述があるほど、聴き手に驚きと印象を与えます。海中での不思議な感覚を音楽で表現しようとした、アーティストの強い意志が感じられるでしょう。

アルバムタイトル曲である「あるがままに」は、後にベストアルバム『1988-1993』にも収録され、2012年にはリメイクベストアルバム『REBIRTH 1 〜re-make best〜』にリテイクバージョンが収録されるなど、長年に渡り高い評価を受けています。

アルバムのブックレットには、角松敏生自身のメッセージが掲載されています。これは、アルバム全体への彼の想いや制作への取り組み姿勢を知る上で、重要な情報源と言えるでしょう。

オリコンチャートでは最高位7位を記録し、12週に渡りチャートにランクイン。売上枚数は21.7万枚にのぼりました。これらの数字は、このアルバムが当時いかに多くの人々に支持されたかを物語っています。

収録曲は全て角松敏生による作詞・作曲・編曲で、一部楽曲では小林信吾、小林正弘といった他のミュージシャンもストリングスやブラスアレンジで参加しています。それぞれの楽曲が、角松敏生独特の世界観と、高い音楽性を融合させた、完成度の高い作品となっています。緻密に作り込まれたサウンドと、聴く人の心を掴むメロディー、そして、活動休止前最後のアルバムという重みも相まって、『あるがままに』は、角松敏生の代表作の一つとして、長く記憶に刻まれる作品と言えるでしょう。

もう一度検索