ある貴婦人の肖像

映画『ある貴婦人の肖像』の紹介

『ある貴婦人の肖像』は、1996年に公開されたイギリス映画で、名監督ジェーン・カンピオンが手掛けました。その原作は、著名なアメリカの作家ヘンリー・ジェイムズによる小説『ある婦人の肖像』です。日本では2001年にDVDがリリースされ、その後2011年版が字幕の異なる形で登場しました。

物語の概要

物語は19世紀が舞台で、主人公のイザベル・アーチャーは、アメリカ生まれの美しい女性です。彼女は幼い頃に両親を亡くし、イギリスの裕福な親戚タチェット家に引き取られます。イザベルは聡明で魅力あふれる存在として周囲に愛され、貴族たちから求婚されるほどです。また、アメリカにいた頃の恋人である青年実業家キャスパーも彼女の元へとやって来ます。

しかし、イザベルは当時の女性の多くが経験したような、夫に従うだけの古典的な結婚に対する抵抗感を持っていました。彼女は一生独身でいることも厭わないと宣言し、自身の自由と自立を堅持します。従兄のラルフ・タチェットも彼女を愛していましたが、結核を患っており、自分の命が長くないことを理解していました。ラルフは、もし自分が亡くなった場合、イザベルに自分の財産が渡るように考慮します。

愛と葛藤

イザベルに新たな選択肢を示したのは、未亡人のマダム・マールでした。彼女はイザベルにとって憧れの存在であり、オズモンドとの結婚を強く勧めます。しかし、実際にはマダム・マールとオズモンドは、イザベルの持つ財産を狙っており、愛のない結婚の結果、イザベルの陽気な性格は次第に失われていくことになります。

ローマに住むイザベルは、表向きは幸福そうに見えましたが、夫であるオズモンドの愛するものは芸術と贅沢な生活のみ。そのため、彼女は次第に精神的な圧迫を受け、息苦しい日々を送ることになります。再会することになるラルフやキャスパーも、イザベルの苦しみに全く気付けずにいます。

ラストシーンの曖昧さ

ラルフが帰国した後に危篤状態に陥ったことを知ったイザベルは、オズモンドの制止を振り切り、イギリスへと戻ります。ラルフの賢さは、彼女の苦悩を察知していました。ラルフはイザベルに「この館で暮らすべきだ」と告げ、彼女がローマに戻らないよう励まします。しかし、ラルフの葬儀の後、キャスパーが再度求婚をします。

物語はここで終わりますが、イザベルの眼には、ローマに戻る道が見えていることを示唆しています。これは映画脚本においても示されていますが、具体的な描写はカットされています。

キャスト

• - イザベル・アーチャー：ニコール・キッドマン（声：田中敦子）
• - ギルバート・オズモンド：ジョン・マルコヴィッチ（声：松橋登）
• - マダム・マール：バーバラ・ハーシー（声：弥永和子）
• - ラルフ・タチェット：マーティン・ドノヴァン（声：牛山茂）
• - キャスパー・グッドウッド：ヴィゴ・モーテンセン（声：田中正彦）

映画制作の意義

ヘンリー・ジェイムズの小説では、ヒロインの最終的な選択が明かされない形で物語が進んでいきます。彼自身は創作ノートでその結末を読者に委ねたことを記しており、多くの研究者がその後のイザベルの運命について様々な考察を行っています。映画の脚本ではヒロインがローマに戻ったことを語る場面が存在しましたが、その後の展開は編集段階で削除されました。逆に、原作には存在しない新しいエピソードが追加されましたが、最終的にはカットされたのです。

以上のように、『ある貴婦人の肖像』は美しい映像と緻密なキャラクター描写を通じて、自由や愛、そして自立の難しさを考えさせる作品となっています。

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