いすゞ・フローリアン

フローリアン (Florian)

いすゞ自動車が1967年から1982年まで生産していた中型乗用車、フローリアンは、名車の一つとして知られています。この車の特長としては、一般的な後輪駆動の駆動方式、そして優れたサスペンションが挙げられます。具体的には、前輪にはダブルウィッシュボーン式サスペンションとコイルスプリングが組み合わされており、後輪にはリジッドアクスルとリーフスプリングが使用されています。このような設計は、当時の他の車両と比べて非常に伝統的で、コンベンショナルな仕様と言えます。

フローリアンは、いすゞの先代モデルであるベレットのリアサスペンションに起因するとされる転倒問題から学び、特に接地バランスやロードホールディングにおいて優れた性能を誇りました。これにより、運転者は限界時でもわかりやすく、安全な走行ができました。また、フローリアンの設計はファミリーカーでの利用を意図しており、操縦安定性や耐久性が重視された手堅いものでした。

軽快なデザインと進化の歴史

フローリアンの歴史は1967年に始まりました。生産が開始されてから11ヶ月の間に、初の発表と発売が行われました。1969年には初めてのマイナーチェンジがあり、フロントグリルのデザイン変更やリアランプの大型化が実施されました。さらに、TS（Touring Sports）モデルも追加されました。

1970年には二度目の大幅な改良が行われ、丸型4灯式ヘッドランプや新たに1800cc SOHCエンジンが追加されるなど、進化を遂げました。また、1973年には1600ccモデルが廃止され、1976年以降は「スーパーデラックス」モデル時代が始まります。1977年のマイナーチェンジではアメリカ車風のデザイン導入が行われ、ディーゼルエンジン搭載モデルも追加されました。

フローリアンは、さらなる改良を重ねて1980年にダッシュボードデザインの刷新やエアコンの装備を実現しましたが、1982年1月に生産が終了しました。その後は在庫分の販売が続けられ、10月までにはすべて完売しました。この長い歴史の中で、フローリアンは合計で14万5,836台が生産され、うち42,625台がバンモデルでした。

車名の由来と象徴的なデザイン

フローリアンという名前は、オーストリア皇帝の愛馬に由来しており、聖人フロリアヌスの名前からも影響を受けています。この馬は児童文学作品にも登場し、キャラクターとして広く知られています。フローリアンに派生した117クーペのエンブレムには唐獅子が描かれ、デザインは東洋を象徴するものとして選又されましたが、フローリアンの後期型の一部には馬のエンブレムが付けられるようになり、車名の由来と結びついています。

いすゞ自動車の技術力やデザイン哲学が反映されたフローリアンは、同社の車両の進化を見れられる良い例であり、運転の楽しさと家族の安全性を両立させた一台として現在も評価されています。

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