いすゞ・ユニキャブ

いすゞ・ユニキャブ：時代の先を走った異色の小型貨物車

1967年から1974年にかけて、いすゞ自動車から発売されていたユニキャブ。その存在は、日本の自動車史において、特異な輝きを放っています。小型貨物車という枠組みを超え、独特のデザインとコンセプトで、多くの自動車ファンを魅了したユニキャブの物語を紐解いていきましょう。

ジープ風デザインと革新的コンセプト

ユニキャブのルーツは、1966年の東京モーターショーにまで遡ります。翌1967年7月13日、49万5,000円の車両本体価格で発売が開始されました。そのデザインは、ジープを思わせる力強いスタイル。前後サスペンションは同社の小型トラック「ワスプ」、エンジンは乗用車「ベレット」の1.3L G130型を流用するなど、いすゞの技術が惜しみなく注ぎ込まれていました。

ユニキャブ最大の特徴は、そのコンセプトです。レジャーユースを想定し、若者向けの都会的でファッショナブルなマルチパーパスカーを目指しました。現代でいうクロスオーバーSUVに近い存在と言えるでしょう。初期モデルは4人乗りでしたが、後期型では、ベレットやフローリアンと共通の1.5L/1.6Lエンジンを搭載し、前席2名、後席3名ずつの向かい合わせシートを持つ8人乗りモデルも登場しました。2名乗車時の最大積載量は400kgと、高い実用性を兼ね備えていました。さらに、初期モデルではフロントウィンドシールドを倒すことで、オープンカーとしても楽しむことができました。ただし、これは後の保安基準改正により不可能になりました。

時期尚早だった革新性

しかし、ユニキャブの革新的なコンセプトは、当時の日本の自動車市場においては時期尚早でした。ジープ風デザインは、一部の層には受け入れられましたが、市場全体のニーズを捉えるには至らず、販売台数は伸び悩みます。消費者の共感を得るには至らなかった点が、ユニキャブの大きな課題でした。いすゞが本格的な多目的4WD車として「ファスターロデオ4WD」(1978年発表)、「ロデオビッグホーン」(1981年発表)を投入するまでには、長い時間を要することになります。

ユニキャブが残した足跡

販売台数は少なかったものの、ユニキャブは日本の自動車史にユニークな足跡を残しました。そのデザインとコンセプトは、後のいすゞの多目的車開発にも影響を与えたと考えられます。また、シトロエン・メアリやマトラ・シムカ・ランチョといった、同様のコンセプトを持つ海外のモデルとの比較検討を通して、ユニキャブの持つ独自性をより深く理解することができるでしょう。

ユニキャブは、成功とは異なる道を歩んだモデルですが、そのチャレンジ精神と革新的な試みは、今もなお自動車ファンたちの記憶に刻まれています。時代を先取りした、その存在感こそが、ユニキャブの真の魅力と言えるのかもしれません。

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