いそがし

いそがし：日本の妖怪についての考察

いそがしは、熊本県八代市の松井文庫に所蔵されている妖怪絵巻『百鬼夜行絵巻』（1832年）で描かれた日本の妖怪です。この絵巻には、妖怪の名前とその絵が描かれていますが、具体的な説明文は一切ありません。そのため、いそがしがどのような存在なのかは謎に包まれています。

江戸時代に製作されたもう一つの絵巻物『百物語化絵絵巻』（1780年）にも、同じような姿をした妖怪が登場しており、研究者の村上健司はこの妖怪を「絵巻のみの妖怪」として位置づけています。このように、いそがしのような妖怪は、当時の文化や風習に深く根付いていたことが伺えます。

デザインのルーツ

さて、いそがしのデザインは、室町時代の『百鬼夜行絵巻』（真珠庵所蔵）に描かれた妖怪に影響を受けています。この絵巻には、舌を出した顔を仰向けにし、着物を肩から脱ぎ捨てて両手を広げた妖怪の姿が描かれています。このスタイルは、いそがしのデザインにも見られる要素として、時代を超えた影響を感じさせます。

また、鳥山石燕は同じ妖怪を『百器徒然袋』の中で「天井嘗」という名前で描いています。これにより、いそがしは江戸時代の妖怪文化の中で、重要な位置を占めていたことが見えてきます。

憑物としての「いそがし」

漫画家の水木しげるは、自身の作品『妖怪博士の朝食』（妖怪変化シリーズ）の中で、いそがしを人に憑依する妖怪として描いています。この作品における設定では、いそがしに憑依されると、当人は落ち着きがなくなり、多忙に動き回ることになるとされています。興味深いのは、ただ動き回ることによって得られる安心感です。逆にじっとしていると、何か悪いことをしているかのように感じてしまうという特徴があります。

このように、いそがしは妖怪の中でも特に複雑な性格を持つ存在であり、その影響を受ける人々にも特有の感情をもたらすようです。このような設定は、いそがしが日本の妖怪文化において特異な存在であることを示しています。

結論

いそがしは、絵巻物や漫画に描かれることで、長い歴史を持つ日本の妖怪の一つとして存在しています。見た目やその行動に謎が多いこの妖怪は、今後も研究や創作の対象として、多くの人々に興味を抱かせることでしょう。日本の伝承の中で、いそがしの持つ魅力がどのように広がり続けるのか、注目していきたいと思います。

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