いとうひろし

日本の絵本作家、いとうひろし氏は、1957年4月20日に東京都練馬区で誕生しました。本名は「寛」と書いて「ひろし」と読みますが、絵本作家としては主にひらがなの「いとう ひろし」名義を使用し、かつては漢字の「伊東 寛」名義で童話なども発表していました。現在も出身地である練馬区を拠点に活動を続けています。

早稲田大学教育学部で学び、在学中は児童文学研究会に所属。この経験が、後に絵本作家としての道を歩む礎となりました。大学卒業後、創作活動を本格化させ、1987年5月には創作絵本『みんながおしゃべりはじめるぞ』（童心社）で絵本作家としてのキャリアをスタートさせます。

いとうひろし氏の作品は、子どもたちの日常に寄り添う温かさと、独特のユーモアが織り交ぜられた物語が特徴です。個性豊かなキャラクターたちが繰り広げる、どこかおかしくて愛らしいやり取りは、多くの読者を引きつけています。特に人気を集めているのが、「ルラルさんシリーズ」と「おさるシリーズ」です。

「ルラルさんシリーズ」は、主人公ルラルさんが巻き起こす騒動を描いた物語で、1990年に刊行された『ルラルさんのにわ』（ほるぷ出版）を皮切りに、現在まで続く人気シリーズとなりました。2023年時点での累計発行部数は20万部を超えています。『ルラルさんのにわ』は、1990年に第13回絵本にっぽん賞を受賞するなど、発表当時から高い評価を得ています。シリーズには他に『ルラルさんのバイオリン』『ルラルさんのごちそう』（以上、初版はほるぷ出版、後にポプラ社からも刊行）、『ルラルさんのじてんしゃ』『ルラルさんのほんだな』（以上、ポプラ社）などがあります。

一方、「おさるシリーズ」は、かわいらしいおさるたちが主人公のシリーズです。1991年刊行の『おさるのまいにち』『おさるはおさる』（いずれも講談社）から始まり、2021年時点で累計36万部を超えるベストセラーとなっています。この2作品は、1992年度に第14回路傍の石幼少年文学賞を受賞しました。シリーズは多岐にわたり、『おさるがおよぐ』『おさるになるひ』『おさるのおうさま』『おさるのはまべ』『おさるのもり』、そして『おさるのかくれんぼ』『おさるのおいかけっこ』『おさるのまねっこ』（いずれも講談社）など、多数の作品が生み出されています。『おさるになるひ』は1995年に第42回産経児童出版文化賞を、さらに翌1996年には国際児童図書評議会(IBBY)オナーリスト 文学作品にも選出され、海外でもその文学性が認められました。『おさるのもり』は2003年に第41回野間児童文芸賞を受賞しています。

これら二大シリーズ以外にも、いとう氏は多くの優れた絵本や童話を生み出しています。1990年刊行の『マンホールからこんにちは』（福武書店、初版は伊東 寛名義）は、1991年に第20回児童文芸新人賞を受賞しました。また、1995年に発表された『だいじょうぶ だいじょうぶ』（講談社）は、読み聞かせでも人気の高い作品で、1996年に第27回講談社出版文化賞絵本賞に輝きました。さらに、1998年の『くもくん』（ポプラ社）は、第4回日本絵本賞読者賞を受賞するなど、その作品は幅広い層から支持を得ています。

絵本、童話、イラストレーションと多方面で活躍するいとうひろし氏は、子どもたちの心に寄り添い、笑いと感動を届ける作品を精力的に発表し続けています。その温かくユーモラスな世界観は、世代を超えて多くの人々に愛され、日本の児童文学界において重要な存在感を放っています。

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