いわき市歌

いわき市歌は、1966年（昭和41年）に福島県内の14市町村（磐城市、常磐市、内郷市、平市、勿来市など）が合併して誕生したいわき市の成立1周年を記念して制定された、市の公式な歌です。

この市歌は、作詞を乗田まさみ氏が手掛け、いわき市小川町出身の著名な詩人である草野心平氏が補作を担当しました。作曲は小林研一郎氏、補作曲および編曲は渡邊浦人氏によるものです。

制定に至るまでには、まず歌詞の一般公募が行われました。427篇にも及ぶ応募作の中から、最終的に草野心平氏の補作が施されたものが採用されました。作詞者の乗田まさみ氏は、北原謙二氏のヒット曲「ふるさとのはなしをしよう」や、有名な「かに道楽」のコマーシャルソングを手掛けた伊野上のぼる氏の別名義であることが知られています。

歌詞の決定に続き、作曲部門の募集が実施されました。ここで入選したのは、いわき市小名浜出身で、当時東京芸術大学に在学中であった小林研一郎氏の応募作品でした。

市歌の制定は1967年（昭和42年）10月1日付で告示され、これは市のシンボルである市章の制定と同時に行われました。正式な発表演奏は、同年11月3日に平市民会館で開催された市制1周年記念式典の場で行われました。

いわき市では、市歌の演奏機会について、原則として毎年10月1日に市が主催する市政功労者表彰式典において斉唱されていると説明しています。また、1983年（昭和58年）には、初演の地である平市民会館で開かれた、市出身の若手音楽家6名による「モーツァルトの夕べ」において、作曲者である小林研一郎氏自身が指揮を執り、参加者全員による市歌の斉唱が披露されたという記録も残っています。

市歌の歌詞には、いわき市の歴史や特徴が織り込まれています。特に2番では「炭鉱（やま）に工場に こだまする歌」と歌われており、これはかつていわき市の基幹産業であった常磐炭田を指しています。市歌制定から9年後の1976年（昭和51年）に常磐炭田は閉山しましたが、その後も市歌の歌詞は変更されずに歌い継がれています。

近年、いわき市では2026年（令和8年）の合併60周年を前に、市民憲章の条文見直しと並行して、市歌についても現在の状況にそぐわない部分があるか、あるいは新しい市歌に代替わりすべきかなどについて、市民を対象としたアンケートを実施しました。その結果、「見直す必要がない」が54%、「どちらでも良い」が30%、「見直した方がよい」が16%となり、現状維持を支持する意見が過半数を占める形となりました。

なお、いわき市の前身となった14市町村のうち、平市のみは1956年（昭和31年）1月8日に独自の市歌「平市歌」（作詞：北郷雪夫、作曲：八木伝）を制定していました。この平市歌は全3番の歌詞が1959年（昭和34年）発行の『概説平市史』に収められていますが、残念ながら楽譜が見つかっておらず、現在有志によって聞き取りなどによる復元作業が進められています。いわれます。

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