平市

平市（たいらし）は、かつて福島県の浜通りに存在した自治体です。1966年（昭和41年）10月1日に、他の13市町村と共に新たな自治体であるいわき市を誕生させ、その歴史に幕を閉じました。現在の行政区分では、いわき市の中央部に位置する平地区としてその名残をとどめています。

歴史的変遷

平の地には、古くから人々の営みがありました。7世紀前半、国造が各地を治めていた時代には、現在のいわき市平地区一帯は石城国造の支配下にありました。奈良時代に入り、718年から728年までの約10年間は、当時の律令国である陸奥国ではなく、独立した石城国の一部とされていましたが、728年には再び陸奥国へと編入されました。平安時代初期、桓武天皇の治世下には、現在の常磐バイパス北口付近に位置する大國魂神社が創建されています。

中世に入ると、この地域は有力な武士団の活動舞台となります。11世紀後半の前九年戦争や後三年戦争では、源氏の軍勢が通過し、この出来事を契機として飯野八幡宮が建てられました。12世紀には、岩城氏が地域一帯で強大な勢力を築き、郊外には美しい白水阿弥陀堂を建立しています。岩城氏がこの地を拠点とした好嶋荘が成立すると、その西側にあたる飯野郷には政所（政治の中心地）が設けられました。足利時代には、現在の平白土地区に白土城が築かれ、岩城氏の主要な拠点となりましたが、15世紀中頃にはその本拠を、白土城から北西に約4km離れた大館へと移しています。16世紀初頭には、「平」という地名が文献に初めて現れるようになりますが、当時は大館周辺を指していたとされています。

近世、1602年には岩城氏が領地を没収され、後に秋田の亀田へと移されました。これに代わって鳥居忠政が入封し、磐城平藩を開くと、地名は「磐城平」と改められます。江戸時代を通じて、この地は徳川将軍家に近い譜代大名が統治する城下町として栄えました。磐城平の城下では、「じゃんがら念仏踊り」という独特の文化が生み出されたほか、安藤氏が藩主を務めた時代には、現在の飯野八幡宮近くに藩校である施政堂が創設され、教育の中心ともなりました。

近代に入ると、1868年の戊辰戦争によって磐城平城は炎上し、大きな被害を受けます。明治新政府が樹立された後、1869年1月19日には陸奥国が分割され、磐城平は新たに設けられた磐城国に組み入れられました。1871年8月29日の廃藩置県を経て磐城平藩は平県となり、磐城平はその県庁所在地となります。翌1872年1月9日には平県と中村県が合併して磐前県が誕生し、引き続き県庁が置かれました。そして1876年8月21日、磐前県、中通りを範囲とする福島県、会津を範囲とする若松県が合併し、現在の福島県が成立。これ以降、平は福島県に帰属することとなります。1889年4月1日には町村制の施行を受けて、平町が独立した町として発足し、磐前郡平町となりました。1896年4月1日には郡の統合により石城郡平町の一部となり、1897年2月25日には常磐線の平駅（現在のいわき駅）が開業し、交通の要衝としての役割も高まります。

市制施行と合併

1937年6月1日、平町は平窪村と合併し、平市が誕生しました。第二次世界大戦中の1945年3月から7月にかけては、平空襲により市街地が大きな被害を受けています。戦後間もない1949年6月30日には、平事件と呼ばれる出来事が発生しました。市制施行後も周辺町村との合併は続き、1950年には4月1日に飯野村、5月15日に神谷村が組み入れられました。1954年10月1日には豊間町、夏井村、高久村、草野村を、1955年2月11日には赤井村の一部をそれぞれ編入しています。そして1966年10月1日、磐城市、内郷市、常磐市、勿来市、小川町、遠野町、久之浜町、四倉町、大久村、川前村、田人村、三和村、好間村という広範囲の13市町村と合併し、巨大な自治体であるいわき市が誕生しました。これに伴い、旧平町域（大字を持たなかった地域）はいわき市平となり、その他の旧平市域の大字には「平」の冠称が付けられることとなりました。

行政

市制が施行されてからいわき市に合併されるまでの間、平市には歴代の市長が行政を担いました。記録によれば、臨時市長代理を含め、複数の人物が市政運営に携わっています。

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