いわき湯本温泉

いわき湯本温泉

いわき湯本温泉は、福島県いわき市に位置する歴史ある温泉地です。その起源は奈良時代にまで遡り、古くは「佐波古」と呼ばれていました。平安時代には「湯本」という地名が用いられ、磐城郡の湯本温泉として知られるようになりました。

泉質

泉質は含硫黄-ナトリウム-塩化物・硫酸塩温泉で、源泉温度は58.3度、毎分5,000リットルの豊富な湧出量を誇ります。かつては常磐炭田の坑底をボーリングして温泉を汲み上げており、その豊富な湯量と効能から、月岡温泉、磐梯熱海温泉とともに「磐越三美人湯」に数えられています。

温泉街

湯本駅前から山側にかけて、温泉通り沿いに温泉街が広がっています。共同浴場は3軒あり、中でも「さはこの湯」は日帰り入浴施設として人気です。温泉街の西側には巨大温泉リゾート施設「スパリゾートハワイアンズ」があり、温泉プールやフラダンスショーを楽しむことができます。また、日本中央競馬会競走馬リハビリテーションセンターには馬用の温泉入浴施設があり、競走馬が温泉に浸かる様子がテレビで紹介されることもあります。

歴史

開湯伝説

開湯の歴史は古く、奈良時代に遡るとされています。伝承によれば、傷を負った丹頂鶴がこの地の泉で湯浴みをしており、それを見た旅人が鶴の傷を癒したところ、鶴が化けた女性が現れ、温泉の効能を伝えたとされています。以来、この地には「佐波古」の湯が開かれたとされています。

古代・中世

延長五年の『延喜式神名帳』には、この湯に鎮座する磐城郡温泉（ゆの）神社の名前が記載されており、それに因んで「日本三古泉」という言葉が宣伝文句に使われるようになりました。平安時代には既に「湯本」という地名が用いられ、磐城郡の湯本温泉として知られていました。鎌倉時代には「三箱の湯」として、信濃御湯、名取御湯とともに三御湯に数えられており、神聖な湯として名を馳せ、湯治の名所として発展しました。

近世・近代

江戸時代には陸前浜街道の宿場として栄えましたが、明治時代に入ると石炭採掘が始まり、坑内から温泉が湧出するようになりました。しかし、1919年には温泉の地表への湧出が止まってしまいます。その後、炭鉱側との協議により1942年に温泉が復活しました。石炭産業が斜陽化すると、常磐炭礦は観光産業への転換を図り、1966年に常磐ハワイアンセンター（現・スパリゾートハワイアンズ）をオープンしました。これは、温泉プールやレジャー施設、フラダンスショーを目玉としたもので、大きな成功を収めました。オイルショック時には一時的に困難な状況に陥りましたが、その後は復活し、現在に至っています。

現代

この炭鉱から観光への転換の物語は、映画『フラガール』として映像化されました。この時、「常磐湯本温泉」から「いわき湯本温泉」に改名されました。また、全国の「湯本温泉」とともに「ゆもと湯けむり5名湯」という宿泊スタンプラリーを開催しています。

2008年には、別府温泉で行われているオンパクを導入し、「いわきフラオンパク」を開催しました。2011年に発生した東日本大震災と福島第一原子力発電所事故の影響で、客足は震災前よりも落ち込んでいるものの、老舗旅館では食事つきの営業を復活させるなど、復興への取り組みが続けられています。旅館「古滝屋」では、2021年3月に福島原発事故について展示する「考証館」を開設しました。

アクセス

鉄道：JR東日本常磐線湯本駅から徒歩5~10分
自家用車：E6 常磐道 いわき湯本ICから5分程度（福島県道14号いわき石川線）

脚注・出典

いわき湯本温泉旅館組合
温泉名人 いわき湯本温泉 - 日本温泉協会
みちのくだより福島 いわき湯本温泉 - 東北地質調査業協会誌『大地 No. 44』2006年2月

関連項目

日本三古湯

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