うだつ

うだつについて

うだつは、東洋の伝統的な家屋に見られる構造物であり、小さな柱や防火壁、装飾的な要素を持つ特徴的な屋根の部分です。本来は「梲」と書いていましたが、室町時代以降に「うだつ」と呼ばれるようになりました。特に中国の中南部の都市部では、隣家の漆喰塗り外壁が屋根上に延長され、黒瓦が載せられる形での伝統が見られます。

歴史的背景

平安時代の初めには「うだち」として知られていましたが、室町時代以降、「うだつ」と訛りました。当初は梁の上に立てる小さな柱を指していたものが、次第に自家と隣家の屋根を持ち上げた部分を指すようになりました。桃山時代には洛中洛外図屏風にうだつのある長屋が描かれ、木製のものも存在したことからも、当時は防火壁よりも風除けや装飾としての役割が強調されていました。

うだつの構造は、隣家に接する部分の壁を持ち上げ、独立した小屋根を作り出すことから始まりました。この形状は「本うだつ」と呼ばれます。また、本うだつの下部が他の部分に張り出すことで、独立した防火壁を形成し、「袖うだつ」と呼ばれるようになりました。こうした形が発展した背景には、町屋が隣接して建っている地域において、隣家からの火災対策が求められたことがあります。

江戸時代中期になると、防火の役割よりも装飾的な側面が重視されるようになり、特に上方地域では商家がぐっと威容を誇示するためにうだつを競って建設しました。しかし、うだつを上げるにはそれなりの費用が必要であったため、うだつが整った家は裕福な家庭に限られていました。このため、「うだつが上がらない」という表現が生まれ、経済的な困難を表す言葉として定着しました。

うだつの種類

うだつには主に二つの種類が存在します。ひとつは屋根の上に設置された「本うだつ」で、もうひとつは1階部分と2階部分の間に設けられる「袖うだつ」です。また、袖うだつに独立した屋根がない場合、その壁は「袖壁」として区別されます。さらに、藁葺き屋根のケラバを保護するために取り付けられた瓦の部分は「高塀」と呼ばれます。地域によって異なる名称も存在し、例えば飛騨高山では「火垣」と呼ばれることもあります。

現代のうだつ

うだつが存在する町並みは少なくなってきていますが、徳島県美馬市脇町南町やつるぎ町貞光、また岐阜県美濃市美濃町では、地域の象徴としてうだつを保存し、住民の誇りになっています。こうした地域では、伝統文化を受け継ぎながら、現代の中でうだつの価値を再認識し、観光や地域活性化に寄与しています。うだつのある町並みを散策することは、日本の歴史と文化を感じる貴重な体験となるでしょう。

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