えりも (敷設艇)

敷設艇「えりも」の概要

「えりも」は、海上自衛隊の敷設艇として設計され、その艇名は北海道の襟裳岬に由来しています。この艦艇は、旧海軍の給油艦「襟裳」に続いており、2代目にあたる艦船です。設計は旧海軍の敷設艇「測天」を参考にし、主に旧海軍技術者で構成される船舶設計協会に依頼されています。基本的には機雷の敷設や掃海、対潜戦に使用できるように設計されており、旧海軍の運用思想が色濃く反映されています。

建造当初は、再軍備への反発を受けて大型掃海船という名称で呼ばれていましたが、実際の運用は多様な任務にわたるものでした。艦の構造としては、艦橋と煙突の間の甲板上に機雷庫が設けられており、機雷を敷設する際には、爆雷兵装の一部を取り外す必要がありました。

しかし、建造時からディーゼルエンジンに関する問題が多く、つねに修正作業が必要とされていたとのことです。旧海軍では敷設艇が多数存在していましたが、海上自衛隊においては「えりも」のみが建造され、その運用の特殊性を物語っています。

艦歴

「えりも」は、昭和28年度の計画601号船として、1954年12月10日に浦賀船渠で鋼材が切断され進水式が行われました。そして1955年7月12日に進水し、12月28日には正式に就役し、横須賀地方隊に編入されました。その後、1958年には呉地方隊に編入され、1960年からは第1掃海隊群に所属しました。

1961年には第2掃海隊群に移籍し、1969年には再び第1掃海隊群に編入されました。1976年には特務船に種別変更され、艦籍番号がYAS-69へと変更され、呉警備隊の水中処分隊の母艦としての役割を果たすことになります。この種別変更の際、軟式潜水装置が搭載され、機雷の搭載用走行ホイスト及び機雷敷設軌条の一部が取り除かれました。また、中央にあった機雷搭載用クレーンも撤去され、新たにダイバー用ダビッドが設置されました。

「えりも」は、1982年3月27日に除籍されるまで、約72万キロを航行し続けました。その運行距離は、艦が果たしてきた多彩な役割を証明しています。海上自衛隊にとって重要な存在であったこの艦船は、長い間にわたって様々な任務を遂行し続けた、まさに艦艇の歴史の中で特異な位置を占める存在です。

参考文献

• - 石橋孝夫『海上自衛隊全艦船 1952-2002』（並木書房、2002年）
• - 『世界の艦船 増刊第66集 海上自衛隊全艦艇史』（海人社、2004年）

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