おおぐま座アルファ星

おおぐま座アルファ星（ドゥベー）

おおぐま座アルファ星は、夜空で比較的明るく輝く2等星であり、特に広く親しまれているアステリズム、北斗七星の一部を構成する恒星です。おおぐま座の中では最も明るい星の一つとして知られています。学名はα Ursae Majoris（略称：α UMa）と記されます。

この星は、北斗七星を形作るもう一つの明るい星、ベータ星とともに、航海や天測における重要な指標として古くから利用されてきました。この二つの星を結んだ想像上の直線を、アルファ星の方向へ延長していくと、やがて天の北極に位置する北極星へとたどり着きます。この性質から、「指極星」の一つとして方位を知る上で非常に役立ちます。また、同じ線を今度はベータ星の方向へ逆向きに延長すると、しし座の主要な恒星であるレグルスを見つけることができます。

見かけ上は一つの星に見えますが、詳細な観測技術によって、おおぐま座アルファ星は実際には非常に複雑な構造を持つ多重連星系であることが明らかになっています。このシステムは、全部で四つの恒星から構成されています。

主星とされるA星は、スペクトル分類がG型の黄色巨星で、単独で2等星の明るさを持つこの連星系全体の主要な光を放っています。このA星から約23天文単位（au）という比較的近い距離を、伴星であるB星が周回しています。B星はA型星に分類される白色の主系列星で、約5等星の明るさを持っています。このA星とB星のペアは、共通重心の周りを約44年という周期で公転しています。

さらに驚くべきことに、このA星とB星のペアから、およそ400倍も離れた遠方に、もう一つの伴星が存在しています。そしてこの離れた伴星もまた、単独の星ではなく、二つの恒星が互いの周りを回る連星系を形成していることが確認されています。したがって、おおぐま座アルファ星は、観測上は一つの点に見えながらも、実際には二つの連星ペアがさらに大きなシステムを構成する、四重連星系なのです。

北斗七星を構成する七つの星のうち、宇宙空間での物理的な運動に着目すると興味深い事実が浮かび上がります。北斗七星のうち、イータ星（アルカイド）とこのアルファ星（ドゥベー）を除く五つの星は、「おおぐま座運動星団」と呼ばれる、宇宙空間で同じ方向に、ほぼ同じ速度で運動している恒星の集まりに属していることが知られています。これは、北斗七星が見かけ上の並びであると同時に、その一部が実際に物理的な繋がりを持つ星団を形成していることを示していますが、アルファ星はこの星団には属していません。

おおぐま座アルファ星には、いくつかの固有名がつけられています。最も広く知られている固有名は「ドゥベー」（Dubhe）で、「ドゥーベ」と表記されることもあります。この名称は、アラビア語で「熊」を意味する「al-dubb（アッ＝ドゥッブ）」に由来しています。元々は「edubh」と綴られていたものが、長い年月の間に語頭の「e」が語尾に移動し、「dubhe」という形に変化したと考えられています。この固有名「Dubhe」は、2016年6月30日に国際天文学連合（IAU）の恒星の命名に関するワーキンググループ（WGSN）によって、おおぐま座アルファ星Aの正式な固有名として承認されました。

中国の歴史においても、おおぐま座アルファ星は重要な星として認識され、異なる名称で呼ばれてきました。『史記』の「天官書」をはじめとする古代中国の歴史書の天文に関する記述では、「天枢（てんすう）」という名で記録されています。また、唐代に成立した密教の教典である『仏説北斗七星延命経』の中では、「貪狼（どんろう）」という名称で言及されており、中国におけるこの星の文化や信仰における位置づけを示しています。

このように、おおぐま座アルファ星は、夜空での見つけやすさ、方位を知る上での実用性、複雑な連星構造、そして多様な文化的名称といった、様々な側面を持つ興味深い恒星です。

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