おおぐま座イオタ星

おおぐま座ι星（ι UMa / ι Ursae Majoris）は、おおぐま座に位置する3等星で、複雑な多重星系を形成しています。この星系は、主星であるA星と、その周囲を公転する二重星のB星とC星から構成されています。

連星系の構造

この星系の最も明るい星であるA星は、スペクトル型がA型の主系列星に分類されています。しかし、その光度やスペクトル特性から、準巨星の段階に移行している可能性も指摘されています。A星自体も分光連星であり、約10年の周期で公転する伴星を持っていることが観測されていますが、この伴星の詳しい性質はまだ解明されていません。

B星とC星は、互いに連星を形成しており、平均約10天文単位（au）の距離を約40年かけて公転しています。この二重星はさらにA星から約132au離れた軌道を、約818年かけて公転しています。このように、おおぐま座ι星系は、複数の星が複雑に絡み合った階層的な構造を持っています。

名称の由来

おおぐま座ι星には、「タリタ（Talitha）」という固有名があります。この名前は、アラビア語で「3番目の足跡」を意味する「al-qafza al-thālitha」に由来します。これは、元々おおぐま座ι星とκ星のペアを指す名前で、古代アラビアの天文学では、λ星とμ星のペア、ν星とξ星のペアと共に、「ガゼルの足跡」を意味する「qafazāt al-ẓibā」というアステリズムの一部を構成していました。

2016年7月20日、国際天文学連合（IAU）は、このタリタという固有名を、おおぐま座ι星Aの正式な固有名として承認しました。

また、この星はかつて、アメリカの宇宙飛行士エドワード・ホワイトにちなんで「Dnoces」（secondを逆から読んだもの）という名前で呼ばれていた時期もありました。これは、宇宙飛行士の名前を星に付けるという、ちょっとしたユーモアから生まれた名前と言えるでしょう。

まとめ

おおぐま座ι星は、複数の星が複雑に公転する魅力的な多重星系です。主星であるA星は準巨星へと進化しつつあり、その周りを二重星のB星とC星が公転しています。さらにA星自体も伴星を持つ分光連星であり、この星系のダイナミクスは天文学の研究対象として興味深いものです。また、タリタという美しい固有名を持つこの星は、歴史的にも文化的な背景を持つ、魅力的な存在です。この星系を研究することは、連星系の形成や進化、そして恒星の多様性を理解する上で重要な手がかりとなります。今後、より詳細な観測や研究によって、この星系のさらなる謎が解明されることが期待されます。

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