おおぐま座オミクロン星

おおぐま座ο星は、おおぐま座の領域に位置する明るさ3等台の恒星です。この星には「ムシダ」という固有名が付けられています。

恒星の概要

おおぐま座ο星は、G型スペクトルを持つ巨星、あるいは輝巨星に分類される天体です。恒星が一生の間にたどる進化の段階において、この星は非常に特殊な時期に位置しています。具体的には、中心部での水素核融合反応を終え、次にヘリウム核融合反応が始まるまでの「ヘルツシュプルングの間隙」と呼ばれる段階を通過中です。この間隙期は恒星にとっては比較的短期間で終わるため、この段階にある星は宇宙全体で見ると珍しい存在とされています。

連星系としての側面

おおぐま座ο星は、単独の星ではなく、伴星を持つ連星系を形成していると考えられています。主星から見かけ上約7秒角離れた位置には、暗い15等級の赤色矮星が存在します。この伴星は、主星から少なくとも400天文単位（au）という非常に大きな距離を隔てて、主星の周囲を公転していると推定されています。この軌道を一周するのに要する時間は、4,100年を超えると考えられており、その公転周期の長さはこの連星系が非常に広大なスケールで成り立っていることを示しています。

太陽系外惑星の発見

2012年には、日本の研究機関を中心とする共同研究グループによって、おおぐま座ο星A（主星）の周囲を公転する太陽系外惑星の存在が明らかになりました。この惑星は、木星の約4.1倍の質量を持つ巨大ガス惑星です。この発見は、このような進化段階にある恒星系においても惑星が存在しうることを示しており、惑星系の形成や進化に関する理解を深める上で重要な知見を提供しました。

名称の由来

おおぐま座ο星の固有名「ムシダ（Muscida）」は、ラテン語に由来する言葉で、「鼻づら」という意味を持っています。この名称は、中世以降の天文学書である「アルマゲスト」などに見られる比較的歴史の浅い名称です。長い間、この名称は広く使われてきましたが、2016年7月20日、国際天文学連合（IAU）の恒星の固有名に関するワーキンググループによって、「Muscida」がおおぐま座ο星の正式な固有名として正式に承認されました。

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