おおぞら (人工衛星)

第9号科学衛星おおぞら (EXOS-C) の概要

日本の宇宙科学研究において重要な役割を果たした「おおぞら」衛星は、旧文部省宇宙科学研究所によって打ち上げられた中層大気観測衛星です。この衛星は1984年に打ち上げられ、主に高度10から100kmの中層大気を観測することを目的としています。この領域での大気の研究は、1970年代から進められており、社会的な要請と技術革新を背景にした中層大気国際協同観測計画（MAP）の一環として「おおぞら」は開発されました。

目的と設計思想

「おおぞら」の設計は、地球型の惑星探査に向けた長期的な視野に基づいています。アメリカや旧ソビエトの火星や金星の探査機が主に固体部分の探査を目指していたのに対し、日本は惑星探査機を大気と磁気圏の観測に特化させる必要があると考えました。本衛星はその先駆けとして、地球の磁気圏と大気の観測を行うだけでなく、将来的に金星や火星の探査機の参考データを収集する役割も果たすために設計されました。実際に、「おおぞら」以降に打ち上げられた「のぞみ」や「はやぶさ」のような探査機は、各惑星の磁気圏や大気に関する研究を続けています。

打ち上げと運用

1984年2月14日、鹿児島宇宙空間観測所よりM-3Sロケット4号機によって「おおぞら」は打ち上げられました。打ち上げ後、衛星は近地点354km、遠地点865km、軌道傾斜角74.6°の軌道に投入されました。しかし、衛星がロケットの3段目と分離した際、ロケット内部のガスの再噴射によって衝突事故が発生しました。この事故の影響で衛星は過熱し、蓄電池が劣化し、運用に大きな支障をきたすこととなりました。それでも、運用チームは慎重に観測を続け、再突入までの約4年間、データ収集を続けました。1988年12月26日、衛星はニューギニア島上空90kmで消滅したと考えられています。

科学的な成果

「おおぞら」は、事故による制約がありながらも、当初の計画に基づいた科学的成果を挙げることに成功しました。中層大気の観測によって得られたデータは、今後の研究にも大きな影響を与えるものであり、国際的な観測計画への貢献が期待されています。

参考資料

この衛星に関する詳細は「中層大気観測衛星『おおぞら』EXOS-C JAXA」の資料を参照してください。

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