M-3Sロケット

M-3Sロケット：日本の宇宙開発を支えた高性能ロケット

M-3Sロケットは、東京大学宇宙航空研究所とその後継機関である宇宙科学研究所（現・宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所、以下ISAS）、そして日産自動車宇宙航空事業部が共同で開発した3段式固体燃料ロケットです。科学衛星の打ち上げを目的として設計・製造され、日本の宇宙開発において重要な役割を担いました。

開発の経緯と背景

M-3Sロケットの開発は、それ以前のL-4Sロケットの技術を基盤として進められました。特に、L-4Sロケットの改良型であるL-4SCロケット（5機打ち上げ）の4号機と5号機が、M-3Sロケットの開発において重要な役割を果たしました。M-3Sロケットは、M-3Hロケットをベースに、誘導制御装置を追加することで、より高度な制御性能を実現しています。

技術的特徴：高度な誘導制御システム

M-3Sロケットの最大の特徴は、その高度な誘導制御システムにあります。M-3Hロケットの第1段は無誘導でしたが、M-3Sロケットでは、TVC（推力偏向制御）とSMRC（小型固体ロケットモータ）による誘導制御機能が追加されました。

SMRCは、ロケット本体の燃焼中、常に燃料を燃焼させる小型の固体燃料ロケットです。左右2つのノズルを持つSMRCは、内部の電磁弁によって噴出ガスを左右のノズルに振り分けることで、ロケットのロール（回転）を制御します。このSMRCの実用化には、電磁弁が焼損しないよう、低温の燃焼ガスを高圧で長時間噴出させる独自の固体燃料技術が不可欠でした。この技術は宇宙科学研究所が独自に開発したもので、M-3Sロケットの高い制御精度に大きく貢献しています。SMRCは、第1段ロケットの4枚の尾翼の先端に装着されていました。

なお、L-4SロケットやM-4Sロケットの末尾の「S」が「Satellite」や「Sphere」を意味するのに対し、M-3Sロケットの「S」は「Super Performance」を意味します。これは、M-3Sロケットが、従来のロケットよりも高い性能を達成していることを示しています。

主要諸元

打ち上げ実績

M-3Sロケットの打ち上げ実績については、ISAS/JAXAの公式ウェブサイトや、東京大学航空宇宙研究所の報告書を参照ください。これらの資料には、個々の打ち上げミッションの詳細な情報が掲載されています。

まとめ

M-3Sロケットは、日本の宇宙開発における重要なマイルストーンと言えるでしょう。東大、ISAS、日産自動車の緊密な連携によって開発された高度な技術と、その成功裏の打ち上げ実績は、日本の宇宙科学技術の発展に大きく貢献しました。M-3Sロケットの開発で培われた技術は、後続のロケット開発にも継承され、日本の宇宙開発の進歩を支え続けています。今後の日本の宇宙探査においても、M-3Sロケットの技術的遺産は重要な役割を果たし続けるでしょう。

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