おかえり、ブルゴーニュへ

2017年に製作されたフランスのドラマ映画『おかえり、ブルゴーニュへ』（原題：Ce qui nous lie）は、、『パリの確率』や『スパニッシュ・アパートメント』シリーズで知られるセドリック・クラピッシュが監督を務めた作品です。

物語の舞台は、世界的に有名なワインの産地として知られるフランスのブルゴーニュ地方。この地に根差したドメーヌ（ワイン生産者）の家を舞台に、長男である主人公が過去との確執を乗り越え、家族と共に家業であるワイン造りに再び向き合う姿を描いています。単なるホームドラマに留まらず、ワイン造りの一年間のサイクル、すなわち季節の移り変わりと共に、登場人物たちの心情や家族関係が繊細に変化していく様を追体験できるのが大きな魅力です。

あらすじ

ブルゴーニュのドメーヌの家に生まれた長男ジャンは、若くして家業に反発し故郷を飛び出し、音信不通となっていました。それから10年の歳月が流れたある日、彼は父が危篤だとの知らせを受けて、ようやく故郷へ戻ってきます。再会したのは、家業を懸命に守る妹のジュリエットと、別の裕福なドメーヌに婿入りした末弟のジェレミーでした。

久々に顔を合わせた三人でしたが、それぞれが自身の人生や家族との関係に悩みを抱えていました。家業を継いだジュリエットは、伝統と革新の間で自身の醸造家としての方向性に迷い、ジェレミーは義理の父親との関係に苦慮しています。一方、ジャン自身もオーストラリアに残してきた妻との離婚問題を抱えていました。

父の病状が悪化する中、ジャンはジェレミーと共にジュリエットのワイン造りを手伝い始めます。共に汗を流し、ブドウと向き合う中で、疎遠になっていた兄妹の間に少しずつ絆が生まれ始めます。しかし、父が息を引き取った後、一家は多額の相続税という現実的な問題に直面します。このままではドメーヌを維持することが難しくなるという廃業の危機に瀕し、三人は苦渋の選択を迫られることになります。

主要キャスト

本作には、主人公の三兄妹を中心に個性豊かな登場人物が登場します。

ジャン: ピオ・マルマイ
10年ぶりに帰郷した長男。過去の確執と現在の問題に向き合う。
ジュリエット: アナ・ジラルド
家業を継ぎ、ドメーヌを守る妹。自身の理想とするワイン造りを模索する。
ジェレミー: フランソワ・シヴィル
他のドメーヌに婿入りした弟。義父との関係に悩む。
マルセル: ジャン＝マルク・ルロ
一家を長年支えるベテランのワイン職人。
アリシア: マリア・バルベルデ
オーストラリアでワイン農家を営むジャンの妻。
オセアーヌ: ヤメ・クチュール
ジェレミーの妻。子供が生まれたばかり。
リナ: カリジャ・トゥーレ
収穫人の一人。ジュリエットと親密になる。
シャンタル: フロランス・ペルネル
オセアーヌの母。娘夫婦に干渉気味。
アンセルム: ジャン＝マリー・ヴァンラン
オセアーヌの父。威圧的な裕福なドメーヌ。
父: エリック・カラヴァカ
ジャンを厳しくも深く愛していた。
母: サラ・グラッパン
約5年前に死去。
マルアン: テウフィク・ジャラ
収穫人の一人。リナと共にジュリエットと交流を深める。
* ジェラール: エリック・ブニョン
隣接するドメーヌの経営者。ジャンたちと時に衝突する。

評価

本作は批評家からも概ね好意的に受け止められました。

フランスの映画情報サイト「アロシネ」によれば、フランス国内のメディア評価の平均は5点満点中3.2点です。また、アメリカの映画批評サイト「Rotten Tomatoes」では、45件の評論のうち73%にあたる33件が高評価を示し、平均点は10点満点中6.2点を獲得。「ファミリードラマという普遍的な題材に、ワイン造りというブルゴーニュならではの『テロワール』（生育環境）の要素を巧みに織り交ぜ、特にワイン愛好家を惹きつける魅力がある」という批評家の一致した見解が示されています。「Metacritic」では、13件の評論に基づいた平均点が100点満点中58点となり、評価が賛否混在していることが分かります（高評価6件、賛否混在6件、低評価1件）。

『おかえり、ブルゴーニュへ』は、美しいブルゴーニュの風景とワイン造りのプロセスを背景に、家族の絆、故郷への愛着、そして過去と未来の間で揺れ動く人々の心情を丁寧に描き出した作品です。ワイン造りを通して自己や家族との関係性を見つめ直す主人公たちの姿は、観る者に共感と感動を与え、特に家族や故郷について考えるきっかけを与えてくれるでしょう。

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