おがさわら丸 (初代)

おがさわら丸の概要

「おがさわら丸」は、小笠原諸島と本土を結ぶ重要な交通手段として1979年4月2日に就航しました。運航は小笠原海運が担当し、東京と父島を結ぶ航路において初めての新造船でした。それまでこの航路では、1968年の本土復帰以降、「椿丸」や「父島丸」といった船が運航されていましたが、「おがさわら丸」の就航により、サービスの質が向上することとなりました。

船の特徴と性能

本船は三菱重工業下関造船所で建造され、前年に就航した「すとれちあ丸」の準同型船でしたが、設計面での工夫により速力や安全性が向上しています。「すとれちあ丸」が2舵を持つのに対し、「おがさわら丸」では1舵の設計が採用されていました。この設計により水中抵抗が軽減され、航海での速力が約0.4ノット向上し、荒れる海でも安定した航行が可能となりました。

また、フィンスタビライザーを搭載しており、横揺れを抑える工夫も施されていました。これにより、航海中の快適性が大きく改善され、利用者からも親しまれる存在となったのです。

主な運航内容

「おがさわら丸」は東京港竹芝ふ頭から父島の二見港を結ぶ航路を運航し、標準航海時間は約28時間30分でしたが、往復ともに気象や潮流により所要時間は変動することが一般的でした。特に往路は29時間程度、復路は東京港の混雑に応じて30時間近くかかる場合もあり年約60往復が行われていました。これは、父島への貴重な交通手段であり、プレハブ住宅やプレジャーボート、さらには郵便物や現金など、地域の生活に欠かせない物資を運ぶライフラインとしての役割を担っていました。

船内の施設

船内にも各種の設備が整えてあり、1等室にはカプセルホテルのような快適な2人室が設けられ、船旅を楽しむなかでレンタルビデオサービスも提供していました。2等室はお手頃な価格で利用でき、多くの乗客に支持されていましたが、揺れやすい船体下部の船室は、閑散期に娯楽室として使用されることもありました。このように、「おがさわら丸」は単なる交通手段としてだけでなく、多くの人にとって楽しい旅の場でもあったのです。

引退とその後

1997年には新しい二代目「おがさわら丸」が就航することとなり、本航路での運航を終え、引退しました。その後、本船はフィリピンのスルピシオラインズに売却され、名前を「Princess of the Caribbean」と改め、セブ島などでの航路に就航しています。これにより、「おがさわら丸」は地域住民にとっての大切な存在から、新たな場所でも活躍の舞台を得ることとなりました。

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