おしょろ丸

北海道大学水産学部練習船「おしょろ丸」の歴史

北海道大学水産学部の練習船である「おしょろ丸」は、時代に合わせて進化を遂げてきました。その歴史は、明治時代に建造された初代「忍路丸」から始まり、現在では5代目の「おしょろ丸」が活躍しています。

初代「忍路丸」

1907年（明治40年）4月、札幌農学校水産学科の初代練習船として誕生したのが「忍路丸」です。三重県大湊町の市川造船所で建造された木造帆船で、当時の工費は14,473円でした。船名は、遠藤吉三郎教授の発案により、佐藤昌介学長が命名しました。

当初は2本マストのトップスルスクーナーとして建造されましたが、翌年にはブリガンティンに改装され、1913年（大正2年）にはスウェーデンのボリンダー＝ムンクテル社製の補助機関（63馬力）を増設しました。1909年（明治42年）2月に竣工し、当初は忍路臨海実習所が設置された小樽市の忍路湾に錨泊していましたが、後に定繋港を小樽港に移しています。「忍路丸」は17年間で26次にわたり日本近海およびオホーツク海で練習航海を実施し、総航程約92,600kmを航海、約200名が乗船しました。

退役後は少年団日本連盟の練習船「義勇和爾丸」となり、東南アジア方面への遠洋航海も行いましたが、1938年（昭和13年）に三重県大王崎で座礁。修理後、貨物船「海勢丸」として運航中に空襲で炎上し、その生涯を終えました。

主要諸元
総トン数：46トン（補助機関設置後153トン）
全長：31.8ｍ
型幅：7.6ｍ
総帆数：13枚
動力：63馬力

2代目「おしょろ丸」（おしょろ丸II世）

1927年（昭和2年）5月、函館高等水産学校の補助機関付き帆船として竣工しました。この船から船名が平仮名表記の「おしょろ丸」となっています。就役時は3本マストのバーケンティンでしたが、太平洋戦争勃発に伴い1942年（昭和17年）に汽船に改装され、帆装とメインマストを撤去。1944年（昭和19年）には残った2本のマストの上部も撤去されました。戦後は南北太平洋への練習航海に従事し、1951年（昭和26年）9月の船体延長・機関換装以降はインド洋やベーリング海、北米方面への遠洋航海にも用いられました。1958年（昭和33年）には南太平洋の周期日食観測に参加。1962年9月に廃止されるまでに54次の練習航海で30万余海里を航行し、延べ1,616名の学生が乗船しました。

主要諸元
船種：帆船→汽船
全長：42m
総トン数：471トン（改装後：616トン）
速力：9ノット（改装前）

3代目「おしょろ丸」（おしょろ丸III世）

1962年（昭和37年）9月に竣工した3代目「おしょろ丸」は、総トン数が1,000トンを超え、調査海域を北洋や豪州水域まで拡大することが可能になりました。可変ピッチプロペラやバウスラスター、漁業演習に必須の船尾トロールを有しており、漁業演習や海洋調査能力が格段に向上しました。1972年（昭和47年）7月には、ベーリング海峡を経て北緯72度・西経173度11分に到達し、日本籍の船舶としての最北限点を更新しました。

主要諸元
船種：汽船
全長：67m
総トン数：1,180トン

4代目「おしょろ丸」（おしょろ丸IV世）

1983年12月竣工。2014年7月廃止。

主要諸元
船種：汽船
全長72.85m
幅12.50m
深さ5.80m
計画満載喫水5.00m
総トン数1,383トン
航海速力約13.4ノット
最大出力2,350kW
航続距離約15,000海里
最大搭載人員：106名（乗組員40名、教員6名、学生60名）

5代目「おしょろ丸」（おしょろ丸V世）

2014年7月に竣工した5代目「おしょろ丸」は、最新の設備を備えた電気推進船です。漁撈装置も充実しており、教育・研究活動に大きく貢献しています。シップ・オブ・ザ・イヤー2014漁船・作業船部門賞を受賞しています。

主要諸元
船種：電気推進船
全長78.27m
幅13.00m
深さ5.80m
計画満載喫水5.00m
国内総トン数1,598トン（国際総トン数　1,989トン）
航海速力約12.5ノット
最大出力2,000kW
航続距離約10,000海里
最大搭載人員：99名（乗組員32名、教員7名、学生60名）

歴代のおしょろ丸は、水産学の発展に大きく貢献してきました。それぞれの時代における技術革新を取り入れながら、数多くの学生や研究者を育成し、海洋に関する知識や技術の向上に寄与してきたその功績は、計り知れません。

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