おたのしみアニメ劇場

『おたのしみアニメ劇場』は、1970年にフジテレビ系列のバラエティ番組『祭りだ!ワッショイ!』内で放送された、歌謡曲をテーマにした短編アニメーション作品です。全26本が制作され、「歌謡アニメ劇場」とも呼ばれていました。

この番組の最大の特徴は、毎回決まったストーリーがあるわけではなく、当時のヒット歌謡曲やそのイメージを基に、独自解釈によるオリジナルアニメーションを制作していた点です。現在で言うところのプロモーションビデオのような映像作品として、非常に斬新な試みでした。

アニメーション制作を担当したのは、石森章太郎、藤子不二雄、つのだじろう、赤塚不二夫らが設立したアニメ制作会社、スタジオ・ゼロです。作品の中には、赤塚作品のキャラクターである「イヤミ」「ニャロメ」「バカボンのパパ」などが登場するものもあり、ファンにとっては見逃せないポイントです。一方で、当時の流行であったシュールでサイケデリックなイメージを盛り込んだ作品もあり、バラエティ豊かな内容となっています。

スタジオ・ゼロは1970年12月に解散しましたが、制作された作品群のネガやフィルムは、元スタッフのアニメーターである鈴木伸一氏が保管していました。そのため、長らくソフト化や再放送はされていませんでしたが、2006年に石ノ森章太郎萬画大全集の全巻購入特典DVDに一部が収録され、初のDVD化が実現しました。さらに、2007年7月には、鈴木氏が館長を務める杉並アニメーションミュージアムでのフジオ・プロのイベント開催など、様々なタイミングが重なり、正式な探索作業が進められました。その結果、フィルム3缶（全26本中18本分 - 本編17本とオープニングに使用された映像1本）が発見されています。

番組のスタッフには、製作をスタジオ・ゼロが、原作・原案もスタジオ・ゼロが担当。脚本は柏倉敏之氏、演出・作画は鈴木伸一氏が手掛け、絵コンテには東海林さだお氏、藤子不二雄氏、赤塚不二夫氏、石森章太郎氏が名を連ねています。監督は野田宏一郎氏が務めました。主題歌は、オープニング・エンディングともに不明となっています。

しかしながら、番組は裏番組に平均視聴率21%を誇るNHK大河ドラマ『樅ノ木は残った』を抱え、半年で打ち切りとなってしまいました。厳密には、公開型バラエティー『新・祭りだ!ワッショイ!』にリニューアルし、本コーナーは終了した形です。放送終了から10年半後の1981年4月10日には、同局で放送された『翔んだカップル』最終回（NG特集）のオープニングに、本コーナーのオープニングの一つ「自由の女神風のオッサン」が使用され、再び注目を集めました。

現在では、WEBアニメスタイル COLUMNで、幻の歌謡アニメとして取り上げられ、発掘された内容についてのリストなども公開されており、その全貌解明への期待が高まっています。

この作品は、当時のアニメーション制作の現場や、人気漫画家たちが手がけた実験的な映像作品として、アニメーション史においても重要な位置を占めていると言えるでしょう。

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