おでかけ交通

北九州市のおでかけ交通

「おでかけ交通」は、福岡県北九州市内で運行されているコミュニティ交通の総称です。これは、地域の公共交通を維持・改善するために、バスやタクシーを活用した多様な形態で提供されています。特に、既存の路線バスが廃止された地域や、高齢化が進み公共交通機関の利用が困難な地域において、重要な役割を果たしています。

おでかけ交通の背景と発展

1999年、高台に住む高齢者の移動手段確保を求める住民の声を受け、北九州市は2000年7月に運行支援を決定しました。同年10月、八幡東区枝光地区でジャンボタクシーによる試験運行が開始され、2002年4月には本格運行へと移行しました。この動きは、2002年の道路運送法改正によるバス路線廃止の自由化を背景に、他の地域でも同様の取り組みを求める声が高まった結果です。2003年4月には、木屋瀬・楠橋・星ヶ丘地区、合馬・道原地区、平尾台地区でも運行が開始され、現在ではさらに多くの地域で展開されています。

運行の仕組みと現状

おでかけ交通の運営は、地域住民が主体となる運営委員会が中心となり、交通事業者が運行を担い、北九州市が財政的な支援を行うという連携体制で成り立っています。北九州市は、運行開始時や車両更新時の助成金支給、赤字路線の補填、試験運行への助成など、手厚いサポートを提供しています。また、地域住民も回数券の販売促進キャンペーンや地域企業の協賛金、町内会費の一部を充てるなど、運営資金の確保に積極的に取り組んでいます。しかし、枝光地区以外では採算が取れていないのが現状であり、路線の維持には課題も残ります。過去には、桜丘地区、太刀浦地区でも運行されていましたが、採算が合わず運行を休止しています。

各地区の運行状況

枝光地区

最も早く運行が開始された枝光地区では、「枝光やまさか乗合タクシー」という愛称で親しまれています。狭隘な丘陵地を巡る5つの循環ルートが設定されており、地域住民の生活を支えています。運営は枝光北・南やまさか乗合ジャンボタクシー運営委員会が行い、運行は八幡第一交通が担当しています。

田代・河内地区

八幡東区南部の山間部で運行される路線で、西鉄バスの路線廃止に伴い、代替として運行を開始しました。田代・河内地区おでかけ交通運営委員会が運営し、八幡第一交通が運行を担当しています。予約制の運行で、小型タクシー車両を使用します。

大蔵地区

八幡東区中央部の高台住宅地で運行されている路線です。勝山、羽衣、末広の3つの循環ルートがあり、南国興業が運行を担っています。大蔵地区おでかけ交通運営委員会が運営主体です。

木屋瀬・楠橋・星ヶ丘地区

八幡西区南西部で運行されている「ふれあいバス」は、第一観光バスが運行を担当しています。筑豊電気鉄道木屋瀬駅周辺の住宅地を循環する路線です。八幡南地区おでかけ交通運営委員会が運営を行っています。

合馬・道原地区

小倉南区西部の山間部と中谷地区を結ぶ路線です。ひまわりタクシーと平尾台観光タクシーが運行を担当し、「ひまわり号」と「カルスト号」の愛称で親しまれています。合馬・中谷地区おでかけ交通運営委員会が運営を行っています。

平尾台地区

小倉南区の平尾台への唯一の公共交通手段です。ひまわりタクシーが運行する「カルスト号」が、中谷車庫やJR石原町駅と平尾台を結びます。東谷地区まちづくり協議会が運営主体です。

恒見・喜多久地区

門司区東部の恒見・喜多久地区では、北九州第一交通が運行を担当しています。巡回ルートと直通ルートがあり、地域住民の移動を支えています。恒見・喜多久地区おでかけ交通運営委員会が運営主体です。

東谷地区

小倉南区南部の東谷地区では、勝山自動車がジャンボタクシーを運行しています。日田彦山線や北九州モノレール、サンリブもりつね方面への連絡手段として機能しています。

葛原地区

2023年4月より運行を開始した乗合タクシーです。太陽交通葛原営業所が運行を行っており、葛原地区とサンリブシティ小倉を結んでいます。

過去に運行されていた路線

桜丘地区、太刀浦地区、戸畑高台地区では、過去に運行されていましたが、採算性の問題や試験運行期間の終了により、現在は運行を休止しています。

まとめ

北九州市のおでかけ交通は、地域の実情に合わせた柔軟な運行形態が特徴です。しかし、採算性の問題や利用者の減少など、課題も多く抱えています。今後も、地域住民と行政が協力し、持続可能な公共交通システムの構築を目指していく必要があります。

もう一度検索