おと☆娘

『おと☆娘』：男の娘ブームを彩った一冊

2010年10月より2013年5月まで、ミリオン出版より発行されていた季刊誌『おと☆娘』（おとにゃん）は、男性が女性的な服装や振る舞いをしている「男の娘」をテーマにした作品を数多く掲載していた雑誌です。最終号では『おと☆娘Ω』（おとにゃん オメガ）と誌名を変えて刊行されました。

誌面内容と特徴

『おと☆娘』は、全年齢対象のエロティックな要素を含む「男の娘」漫画をメインコンテンツとしていました。他に、特集記事、漫画家へのインタビュー、アニメ・ゲーム・ライトノベル作品レビュー、「男の娘」イラストギャラリー、そして「美寿羽楓の初めてのオトコの娘講座」といった女装に関する実践的なコーナーも掲載されていました。

大きな特徴として挙げられるのは、各号にブルマー、スクール水着、ミニスカートといった女性用衣装が付録として付いていた点です。広報担当者の説明によると、これらの付録は読者にとって「男の娘」の世界観をよりリアルに感じてもらうための工夫であり、掲載作品に登場するキャラクターの衣装を参考に選ばれたと言われています。また、ドラマCDを付録とした号もあり、声優陣による魅力的な音声コンテンツも提供していました。さらに、新人漫画家発掘を目的とした「おと☆娘コミック大賞」も開催されました。

創刊の経緯と競合誌

『おと☆娘』の創刊は、当時の「男の娘」ブームの高まりと、編集長である頭根宏和氏の着眼点から生まれました。頭根氏は以前は実話漫画誌の編集に携わっており、若い男性の間で広がる「男の娘」への関心に注目し、このテーマを扱う雑誌の創刊を決意したのです。

しかし、既に同じテーマを扱う雑誌『わぁい!』（一迅社）が先行していました。そこで『おと☆娘』は、『わぁい!』とは異なる差別化戦略を採る必要がありました。『わぁい!』が主に男性同士のカップリングを多く掲載していたのに対し、『おと☆娘』は男と女のカップリングを多く掲載することで、より広い層の読者獲得を目指したのです。また、完全なエロ本ではなく、自主規制の範囲内で表現することを心がけていました。

『わぁい!』との競争は発行部数においても顕著でした。両誌とも、ブルマーやスクール水着などの付録を付けることで話題を集め、読者獲得にしのぎを削りました。

アンソロジーコミックの刊行

『おと☆娘』本誌に加え、ミリオン出版は『オトコの娘コミックアンソロジー』というアンソロジーコミックも刊行しました。このアンソロジーは、各巻で異なるテーマを設定し、それに沿った作品を収録していた点が他社のアンソロジーコミックとの違いでした。例えば、第1巻では他者から強制的に女装させられる「男の娘」がテーマとなっていました。

休刊と「男の娘」ブームの終焉

『おと☆娘』は、付録の珍しさやエロティックな要素から注目を集め、順調な滑り出しを見せました。しかし、2013年5月に『おと☆娘Ω』として発売された最終号で休刊が発表されました。

休刊の理由については、複数の見解があります。少ない市場を『わぁい!』と奪い合った結果、売り上げが低迷したという説や、魅力的な作品を生み出すことができなかったという説などです。サブカルチャー研究者からは、『おと☆娘』が『わぁい!』と比べて男性的な性嗜好に訴求しすぎたがために、読者層を狭めてしまったという指摘もあります。

『おと☆娘』の休刊とほぼ同時期に、『わぁい!』も休刊となりました。これにより、全年齢対象の「男の娘」漫画は減少傾向を示し、「男の娘」ブームは徐々に終息に向かいました。

掲載作品とその他

『おと☆娘』には、立花瑛による『先生あのね。』や、ひな姫による『あまはら君+』といった長期連載作品や、読み切り作品、イラストギャラリー、漫画家へのインタビューなどが掲載されていました。声優へのインタビューや、女装に関する解説記事なども掲載され、多様なコンテンツを提供していました。

『おと☆娘』は、その時代の「男の娘」ブームを象徴する雑誌として、そして付録の女性用衣装など、多くの話題を提供した雑誌として、日本の漫画史にその名を刻んでいます。

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