おながわさいがいエフエム

女川さいがいFMとオナガワエフエム：被災地からの声と復興の歩み

2011年3月11日、東日本大震災の大津波は宮城県女川町を襲いました。町を流れる防災無線は途絶え、人々は情報から切り離されました。この危機的状況の中、2011年4月21日、新たな情報伝達手段として『女川さいがいFM』が開局しました。

災害からの発信：女川さいがいFM

女川さいがいFMは、地元出身の松木達徳氏と、多くのコミュニティFM設立に携わってきた放送作家トトロ大嶋氏を中心に設立されました。当初は2ヶ月程度の活動予定でしたが、被災地の深刻な状況を目の当たりにし、長期的な活動を決定。避難所で呼びかけ、集まった地元住民、特に高校生から30代の若者たちが中心となり、即席で番組制作や取材を学びました。東京からのボランティアスタッフが技術面を支援する体制で、24時間放送体制を維持しました。

主力番組『おながわ☆なう。』は、当初は支援物資情報やライフライン情報が中心でしたが、次第に町民からのリクエストやインタビューコーナーなど、多様なコンテンツへと発展しました。遠隔地からの生中継なども積極的に行い、町内外への情報発信を継続しました。放送設備には、フジテレビ社員が個人で開発したシステムが活用され、その取り組みはテレビ番組でも取り上げられました。放送スタジオは数回移転を繰り返しながらも、5年間活動を続けました。

閉局と新たな一歩：一般社団法人オナガワエフエム

女川町の復興が進むにつれ、2016年3月29日、女川さいがいFMは臨時災害放送局としての放送を終了しました。最後の放送では、サザンオールスターズの『TSUNAMI』が流され、多くの反響を呼びました。その前日には、桑田佳祐氏、原由子氏によるサプライズライブが開催され、閉局を祝いました。

閉局後もラジオ番組継続を求める声を受け、女川さいがいFMの運営メンバー有志により一般社団法人オナガワエフエムが設立されました。TBCラジオで新番組『佐藤敏郎のonagawa now！～大人のたまり場～』を開始し、全国各地のコミュニティFMでも放送されています。2018年には、放送文化基金賞を受賞しました。

オナガワエフエムは、『おながわ☆なう。復幸RADIO』を制作するほか、YouTubeチャンネルを開設し、オンラインイベントの企画・制作にも携わっています。2022年3月には、長年続いた『おながわ☆なう。』を終了。復興の進展に伴い、町の明るい側面を発信する方向へシフトしています。

メディアとの関わりと影響

女川さいがいFMは、多くのメディアに取り上げられ、全国的に知られる存在となりました。多くの著名人が番組に出演したり、運営を支援しました。2013年には、女川さいがいFMをモデルとしたテレビドラマ『ラジオ』がNHKで放送され、ギャラクシー賞を受賞、国際エミー賞にもノミネートされました。2021年のNHK連続テレビ小説『おかえりモネ』にも、女川さいがいFMがモデルとなった架空のコミュニティ放送局が登場しました。

災害支援活動

女川さいがいFMで培った経験を活かし、オナガワエフエムは熊本地震や北海道胆振東部地震の際、被災地の災害FM局に対し機材提供や運営支援を行いました。

まとめ

女川さいがいFMは、災害時におけるコミュニティFMの役割を改めて示しただけでなく、復興への道を歩む人々の希望の光となりました。オナガワエフエムは、その精神を受け継ぎ、新たな形で女川町の魅力を発信し続けています。被災地の経験から生まれた貴重な取り組みは、日本の災害対策に多大な貢献を果たしています。

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