おはようワイド・土曜の朝に

『おはようワイド・土曜の朝に』（おはようワイド・どようのあさに）は、朝日放送（ABC）が制作し、1975年 4月5日から1989年 3月25日まで、当時のNETテレビおよびその後のテレビ朝日系列局を中心に、毎週土曜日の午前8時30分から午前9時30分まで生放送されていたトーク形式のワイドショー番組です。約14年間にわたり、土曜日の朝の顔として多くの視聴者に親しまれました。

この番組の誕生は、1975年春に実施された関西地区のテレビ局における大規模なネットワーク変更、いわゆる「腸捻転解消」に深く関わっています。それまでNET（日本教育テレビ、現在のテレビ朝日）系列だった毎日放送（MBS）がTBS系列へ、そしてTBS系列だった朝日放送（ABC）がNET系列へと、基幹となる系列局が入れ替わったのです。この変更に伴い、MBSが制作しNET系列で放送されていた土曜朝のワイドショー『八木治郎ショー』がTBS系列へと移行したため、新たにNET系列の一員となったABCがその後継番組として本番組を企画・制作することになりました。司会には、腸捻転解消前にTBS系列であったABCからTBSへ出向し、『モーニングジャンボ』や『モーニングジャンボ奥さま8時半です』でサブ司会として人気を得ていたABCアナウンサーの玉井孝氏が大阪へ呼び戻され、メインキャスターに据えられました。こうして、『八木治郎ショー』、関西テレビ制作の『ハイ!土曜日です』に次ぐ、在阪テレビ局制作による3番目の土曜朝ワイドショーが誕生しました。

番組は、メイン司会の玉井孝氏と、時代によって変わるアシスタントが、毎週様々な分野から招かれるゲストとトークを繰り広げるスタイルで進行しました。玉井アナウンサーは番組開始から終了まで一貫して司会を務め、番組の顔として定着しました。初代アシスタントには眞理ヨシコさんとはしだのりひこさんが務め、その後、桜井一枝さん、梅田まゆみさん、八馬加代子さんといった面々を経て、番組末期には小林千登勢さんがアシスタントを務めました。

朝日放送が制作を担当する夏の高校野球、すなわち『全国高校野球選手権大会中継』が開催される期間中の本番組の扱いは、その時期によって変化がありました。番組が始まった当初から1985年頃までは、大会序盤の土曜日は本番組が優先して放送されることが多かったものの、土曜日の試合開始時間によってはネット局向けに裏送り放送となることもありました。1980年代後半になると、特に土曜日に4試合が組まれる場合など、高校野球中継が優先され、本番組がネット局への裏送りとなるパターンが増加しました。この高校野球期間中の対応は、本番組の後継として現在も続く『朝だ!生です旅サラダ』にも引き継がれています。

長きにわたり放送された番組は、1989年 3月25日の放送をもって最終回を迎えました。番組終了の主な理由としては、メイン司会である玉井孝アナウンサーが同年11月に朝日放送を定年退職することが決まっていたことなどが挙げられています。

番組にはいくつかの興味深い特徴がありました。例えば、番組の冒頭、オープニングトークが終わった後には、全国のネット局を紹介するテロップが表示されました。番組初期のデザインは、画面中央にABCのロゴマークを置き、そこから各ネット局名に向けて放射線状に線が伸びるというものでした。後期には、より簡素化された日本列島の地図上に各ネット局の所在地と大阪を結ぶ線が表示され、その横に局のアルファベット略称が列記される形式に変わりました。関東地方のネット局は、番組開始当初は「NET」と表示されていましたが、1977年4月の社名変更後は正式社名である全国朝日放送の略称「ANB」と表記されました。これは、他のテレビ朝日制作番組で「テレビ朝日」という愛称が使われることが多かったのに比べると、少し珍しい表記方法でした。

スポンサー構成にも特徴があり、日本文化センター、積水化学、毛染めパオンなど、大阪に本社を置く企業が多く見られました。この傾向は、現在の『朝だ!生です旅サラダ』にも共通する点です。番組のテーマ曲は、個性的な楽曲で知られる作曲家・山下毅雄氏が手がけ、曲中の口笛も山下氏本人が担当していました。これは、ABC制作の『霊感ヤマカン第六感』や『ワイドショー・プラスα』など、他の番組でも見られた山下氏の独特なサウンドテイストでした。年末年始も原則として通常通り放送され、大晦日や正月三が日が土曜日に当たっても放送されましたが、唯一の例外として1989年1月7日は昭和天皇崩御に伴う報道特別番組のために急遽休止となりました。

番組の中で特に印象的なエピソードもいくつか伝えられています。1986年2月8日の放送回には、漫才師の横山やすし氏と息子の木村一八氏が親子でゲストとして登場しました。当時16歳だった一八氏が玉井アナの質問に答え、その後やすし氏がコメントする流れでしたが、話の最中にやすし氏が突然、感極まって号泣してしまったことがありました。その涙は番組が終わっても止まらなかったと言われています。また、画家である高橋孟氏がゲストの似顔絵をスタジオで描き、本人にプレゼントするというコーナーも人気でした。番組の締めくくり近く、アイキャッチが入る直前に高橋氏が似顔絵を描いている様子が映し出されるのが恒例でした。最終回には、これまでのゲストではなく、司会の玉井アナウンサーが胴上げされているイラストが描かれ、番組の歴史に幕を閉じました。

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