おばっち飯塚

おばっち飯塚（おばっち いいづか）

日本の元女子プロレスラー。本名は飯塚 昌美（いいづか まさみ）。1973年1月12日、千葉県浦安市に生まれ、身長152.4cm、体重71kgという体格でリングに上がった。彼女のキャリアは、何よりもその強烈なキャラクター性によって特異な光彩を放っている。

異色のキャラクター

おばっち飯塚最大の特徴は、中年女性、いわゆる「おばさん」をモチーフにした個性的なキャラクターをリング上で徹底して演じきった点にある。彼女のリングコスチュームは、一般的なプロレスラーのそれとは一線を画していた。トレードマークは、素っ頓狂とも評された乱れたパーマのかつらを被り、リングには白い割烹着姿で登場すること。さらに、手には様々な小道具を詰め込んだ買い物かごを持って入場するという、まさに異色の「コスプレレスラー」だった。中でも特に観客の目を引いたのは、試合中に新鮮な大根を文字通りの「凶器」として使用したことである。この大根を使った攻撃は、文字通り大根の破片や汁を飛び散らせるため、試合後にはリングの徹底的な清掃が必須となるほどだった。飴を投げたり、ユーモラスなムーブを取り入れたりと、そのパフォーマンスは常に観客の度肝を抜いた。

キャリアと所属団体

プロレスラーとしてのデビューは1997年5月26日。兵庫・姫路厚生会館大会で藤原和子戦にてキャリアをスタートさせた。この時期、藪下めぐみとは同期にあたる。デビュー当初は本名の飯塚昌美として活動していたが、すぐにそのキャラクター性を際立たせるためにおばっち飯塚へと改名した。

所属団体は、吉本女子プロレスJd'からJDスター女子プロレスへと移籍し、2004年まで活動。2004年4月29日をもってJDスターを離脱した後はフリーランスとして活動期間を経た。その後、2005年5月22日にLLPWへ入団し、晩年のキャリアを送ることとなる。

キャリアの中で一度、キャラクターからの脱却を図った時期もあった。2001年末頃、フジテレビ系列のテレビ番組『ビューティーコロシアム』への出演を機に、コミカルなイメージからの脱却を目指し「サイバー飯塚」への改名を試みたのだ。入場曲もそれまでのコミカルな「サザエさん」から、よりクールなイメージの「TANK!」へと変更したが、残念ながらリングネームの存続をかけた試合に敗れたため、短期間でおばっち飯塚に戻ることとなった。このエピソードもまた、彼女のユニークなプロレス人生の一端を示している。

引退、そして一夜限りの復帰

おばっち飯塚は、約11年間のプロレスラー生活を経て、2008年5月31日、後楽園ホール大会で引退試合を行い、リングに別れを告げた。その個性的すぎるファイトスタイルとキャラクターは、多くのファンの記憶に強く刻み込まれた。

引退から数年が経過した2012年5月6日、同期である藪下めぐみのデビュー15周年記念興行（板橋グリーンホール大会）において、一夜限定でリングに復帰。再びあの強烈なキャラクターを見せ、往年のファンを喜ばせた。

得意技とテーマ曲

おばっち飯塚の得意技としては、前述の大根攻撃のほか、試合中に観客席や相手レスラーに飴を投げる飴投げ、自身の名前を冠したおばっちドロップ、そして回転式の技であるクルクルツイスターなどが挙げられる。

入場テーマ曲は、キャラクターに合わせてテレビアニメ「サザエさん」のテーマ曲（宇野ゆう子歌唱）を使用していた時期が有名である。サイバー飯塚時代には「TANK!」（シートベルツ）に変更していた。

リング上で唯一無二の存在感を放ったおばっち飯塚は、日本の女子プロレス界に強烈なインパクトを残したレスラーの一人と言えるだろう。

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