おばりよん

おばりよん

おばりよんは、新潟県三条市に古くから伝わる妖怪の一つです。この妖怪は、大正時代の民俗誌『越後三条南郷談』に「ばりよん」としての記録があり、別名には「おんぶおばけ」、「うばりよん」、さらに「おぼさりてい」などがあります。

特徴と伝承

おばりよんの特徴は、夜道で藪の中を歩いていると突然「おばりよん」と叫びながら背中に乗ってくることです。通常は体格が小さく見えますが、一旦背中におぶると、その重みが増していき、決して簡単には離れないとされています。『越後三条南郷談』によれば、「ばりよん」は通行人の背中に飛び乗り、頭をかじることがあり、そのため夜道を歩く際には金鉢を被ることで安全を図ると伝えられています。この名称の由来は、「負われたい」という方言に端を発しています。

この妖怪にまつわる昔話として、ある者が霊的な存在の出現する場所に足を運んだ際に耳にした声を聞き、「負（ば）れたかったら負れろ」と叫んだ途端、重たい何者かが背中に乗ってきたというものがあります。仕方なくその存在を背負って帰ると、なんとそれが大量の金に変わっていたという物語が存在します。また、別の話では「おぶさりたい」と泣き叫ぶ者を背負うと、同様に黄金が得られるとされています。

このように、恐怖心を見せない勇敢な者が富を得るストーリーは他の話とも類似点が見られます。例えば、赤子を抱いた者が剛力を授かる「産女」や、武士との力比べに勝つことで大金を得る怪異「金ん主（かねんぬし）」との関連も指摘されています。これは、人が恐れずに試練に立ち向かうことが、結果的に富をもたらすという共通のテーマを持つからです。

類話と広がり

おばりよんの物語は、日本全国で広く類似のテーマを見せています。「取っつくか引っつくか」や「ばろんばろん」といった謎めいた声の存在に対して、勇敢な者や善良な人々が「取っつくなら取っつけ」と返すことで富を得るストーリーは他の地域にも数多く見られます。これらの物語は昔話研究の中で「取っ付く引っ付く」という類型に分類されています。実際には、何か化物が現れるのではなく、小判が体に貼りつくという話もあったとされています。

また、新潟の南蒲原郡では、おばりよんは「バロウギツネ」と呼ばれる狐の一種とされ、人間に化けて「バロウバロウ」と鳴く存在と伝えられています。類似の妖怪については、他の地域でも見受けられ、例えば大阪府では化け狸「負われ坂」がおばりよんの一種だと考えられています。さらに、徳島県の怪石「オッパショ石」もおばりよんと同一視されていることがあるのです。

備後国の比婆郡地方では「おいがかり」と呼ばれる妖怪が、道を歩いている人の背後に覆いかかるという伝承がありますが、これもまたおばりよんの一種として考えられています。

結論

このように、おばりよんは日本の民俗において独特な存在であり、勇気や智慧が富を生むという教訓を含んだ物語として、今なお伝えられています。妖怪としての側面だけでなく、地域の文化や価値観が反映された昔話の一部として、その意義は多岐に渡ります。

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