小判

江戸時代の金貨、小判：その歴史と経済的意義

はじめに

小判は、江戸時代を通じて主要な通貨として使用された金貨です。その独特の形状、金含有量、そして発行から廃絶に至るまでの歴史は、日本の経済史を理解する上で重要な要素となっています。本稿では、小判の形状、量目、発行枚数、改鋳の歴史、そして現代における小判を取り巻く状況について、詳細に解説します。

小判の形状と特徴

小判は、一般的に楕円形をしており、表面には独特の打目が刻まれています。上部には五三桐、中央上部には「壹両」、下部には「光次（花押）」などの極印が確認できます。その黄金色の輝きは、表面の銀を薬品で除去する「色揚げ」という加工処理によるものです。小判は純金ではなく、金銀合[[金]]で製造されていました。

小判の形状について、米俵を模したものという説も唱えられていますが、確実な証拠はありません。打目についても、金地金の純度を示すため、または製造工程で不可避的に生じたものなど、諸説が存在します。

小判の量目と金含有量

小判の額面は金一両です。しかし、一両の重さは時代や貨幣の種類によって異なり、常に一定ではありませんでした。鎌倉時代には金一両は五匁、銀一両は4.3匁とされていましたが、室町時代には京目金一両が4.5匁（約16.8グラム）と定められました。安土桃山時代には、四進法による通貨単位の都合上、京目金一両は四匁四分へと変更されました。

慶長小判の実際の金含有量は、名目上の一両の金平価をやや下回っていました。一両は日常生活では高額なものであり、庶民には縁遠い存在でした。そのため、小判は百両包、五十両包などまとめて取引されることが一般的でした。

小判の発行と改鋳

慶長6年（1601年）、徳川家康が後藤家に命じて鋳造させた慶長小判が、最初の小判とされています。万延元年（1860年）の万延小判まで、様々な種類の小判が発行されました。

しかし、後世には金銀産出の衰退や幕府の財政難により、小判の品位（金含有率）と量目が改悪されることがしばしばありました。これは、金産出の減少、小判の磨耗、海外貿易による金の流出、そして幕府の財政逼迫などが原因として挙げられます。幕末には、日本国外での金銀比価の相違を是正するために、極端に小型の万延小判が発行され、インフレを引き起こしました。

定位貨幣の台頭

江戸時代には、小判以外にも一分判金、一朱判、二朱判、二分判などの貨幣が発行されました。これらの貨幣は、小判よりも金含有量が少なく、補助貨幣的な役割を果たしました。幕末には、これらの定位貨幣が小判を凌駕するほど流通するようになりました。

大判との比較

大判は、小判とは異なり、一般通貨ではなく、主に恩賞や贈答用に用いられました。計数貨幣ではなく、品位と量目、そして需要に基づいて取引されました。天保年間には、大判と小判の中間的な貨幣として五両判が発行されましたが、ほとんど流通しませんでした。

明治以降

明治時代以降、新貨条例が施行され、1両は1円と等価とされました。それまでの古金銀は、含有金銀量に基づいて新貨幣と交換されました。

小判の展示

現在、貨幣・浮世絵ミュージアム、貨幣博物館、造幣博物館などで、小判が体系的に展示されています。

結論

小判は、江戸時代の経済を支えた重要な通貨であり、その歴史は日本の経済史と深く関わっています。形状、量目、金含有量、発行枚数、改鋳の歴史など、様々な側面から小判を理解することで、江戸時代の経済状況や社会構造をより深く知ることができるでしょう。 小判は単なる通貨ではなく、当時の技術や経済状況、そして社会構造を反映する歴史的遺物として、今後も研究と理解を深めていく必要があるでしょう。

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