おむすびコロリン

『おむすびコロリン』は、1969年（昭和44年）4月2日から同年9月24日にかけて、TBS系列の毎週水曜日20時から20時56分の時間帯で放送されたテレビドラマシリーズです。全15回で完結するクールとなりました。

物語の中心となるのは、九重佑三子が演じる主人公、細野文江です。彼女は東欧大学で児童心理学を専攻する女子大生ですが、同時に家庭では母親を亡くした家族のために、父親である細野新兵衛（益田喜頓）や、幼い妹の雪江（深沢裕子）、弟の淳（小山伸一）の面倒を見る母親代わりという大きな役割を担っています。多忙な日々を送る文江は、大学へ通う際にも家で手作りしたおむすびを持参しており、このおむすびが彼女の健気さや家庭での立場を象徴するものとして、ドラマのタイトルにも結びついています。

文江の周囲には、個性豊かな登場人物たちが彩りを添えます。中でも、関口宏が演じるボーイフレンドの松田明夫は重要な存在です。明夫は時に文江をからかうこともありますが、彼女が背負っている家庭の事情をよく理解しており、心の中では深い思いやりを寄せています。彼らの関係性は、当時の若者たちの間のコミュニケーションや恋愛観を映し出しています。

ドラマの大きなテーマとして描かれているのは、文江や明夫といった若者たちの新しい生き方と、古き良き時代の価値観を頑なに守ろうとする親世代、特に文江の父・新兵衛や明夫の父・松田久作（花沢徳衛）といった人物たちの間の世代間ギャップです。両世代がそれぞれの価値観に基づいて行動することで生じる衝突や、互いを理解しようとする姿を、ユーモアを交えながら明るく描いています。父親たちの昔気質な言動と、それに対する子供たちの反応を通じて、当時の日本の社会が経験していた価値観の変化や、家族のあり方などが浮き彫りになります。

また、『おむすびコロリン』が放送されていた時間帯は、当時プロ野球ナイター中継が頻繁に行われていたため、本ドラマはナイター中継のない週に放送される、いわゆる隔週放送の形式が取られていました。レギュラー出演者である関口宏、益田喜頓、加藤芳郎らは、この特殊な放送スケジュールの中で出演を続けていました。

主要キャストには、九重佑三子、関口宏、益田喜頓、花沢徳衛、小山伸一、深沢裕子らが名を連ねています。他にも、加藤芳郎演じる花小路広照や、坪内美詠子演じる花小路絹子など、個性的なキャラクターが登場し、物語を豊かにしています。ジェリー藤尾、青空はるお・あきお、高杉早苗、吉田未来といった俳優陣も出演しました。

制作スタッフとしては、脚本を安倍徹郎、宮内婦貴子、眞弓典正、恩田誘が担当しました。そして、映画監督としても知られる中平康が全話の演出を務めており、その演出によって登場人物の心情やコメディタッチのシーンが効果的に表現されています。制作はTBSが行いました。

『おむすびコロリン』は、家族愛や世代間の対立と理解、若者の成長といった普遍的なテーマを描きつつ、当時の日本の家庭や社会の雰囲気を色濃く反映させた作品として、多くの視聴者に親しまれました。全15話という短い期間ではありますが、当時の人気俳優とベテラン俳優の共演、そして確かな脚本と演出によって、昭和のホームドラマを代表する一作として記憶されています。

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