おやじ山脈

『おやじ山脈』は、1972年10月3日から1973年3月27日までTBS系列で放送された、全26回のテレビドラマです。毎週火曜日の夜に放送され、当時日産自動車の一社提供番組として人気を博しました。

このドラマは、1968年と1969年に同枠で放送された『おやじ太鼓』の続編的な位置付けで、実質的な続編として制作されました。『おやじ太鼓』で描かれた鶴家の物語に、新たに愛甲タイル店を営む愛甲家が加わり、より賑やかで複雑な人間関係が展開します。

物語の中心は、愛甲タイル店の職人・木全健一郎と鶴家の三女・かおるの恋と、その妊娠発覚から始まる騒動です。かおるの妊娠は、両家の親である愛甲源四郎と鶴亀次郎を大いに振り回します。二人の老親父は、若者たちの恋模様に翻弄されながらも、温かく見守る姿が描かれています。

さらに、愛甲家の長女・順子が恋の季節を迎え、源四郎の心配事が増えるなど、家族それぞれの成長や葛藤が丁寧に描かれています。愛甲家には、長男が既に亡くなっている設定で、次男の良介が兄弟の中で最年長となっています。三男は考古学を専攻する大学生、四男はのんびりとした大学生、五男は中学生と、個性豊かな兄弟たちがそれぞれの悩みや喜びを経験します。中でも、五男の正明は、まさに源四郎の心配の種であり、彼の奔放な行動が笑いを誘います。

かおるの出産や、家族を取り巻く様々な出来事をコミカルに描いたホームコメディとして、『おやじ山脈』は、家族の温かさや絆を描きながらも、クスッと笑える場面も多く、幅広い世代の視聴者を魅了しました。

キャストは、愛甲源四郎役に佐野浅夫、愛甲信子役に織賀邦江（後に三宅邦子）、鶴亀次郎役に進藤英太郎、鶴愛子役に風見章子、鶴かおる役に沢田雅美など、ベテラン俳優から若手俳優まで豪華な顔ぶれが勢揃いしました。郷ひろみは愛甲家の五男、正明役で出演し、主題歌「天使の詩」も担当しました。挿入歌「青いしずく」も郷ひろみによって歌われ、ドラマの世界観をさらに盛り上げています。

脚本は木下恵介、演出は鈴木利正、音楽は木下忠司と、実力派スタッフ陣によって制作され、高い完成度を誇る作品となっています。主題歌「天使の詩」は、アン・グレゴリーとポール・クーラックによる楽曲を、ヒロコ・ムトーが日本語詞に翻訳し、青木望が編曲したものです。挿入歌「青いしずく」は、ヒロコ・ムトーが作詞、木下忠司が作曲を担当しました。

『おやじ山脈』は、時代を超えて愛される、心温まる家族ドラマとして、多くの視聴者の記憶に刻まれています。家族の温かさ、そして若者たちの成長といった普遍的なテーマは、現代においても共感を呼び、改めて見返してみる価値のある作品と言えるでしょう。

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