おトラさんのホームラン

『おトラさんのホームラン』は、1958年3月14日に東宝系で公開された日本[[映画]]です。モノクロ、スタンダードサイズの作品で、上映時間は56分。東京映画が製作を担当しました。おトラさんシリーズの第2作目にあたる本作は、前作とは異なり、原作が有崎勉（柳家金語楼）に、漫画版の原作者である西川辰美は原案としてクレジットされています。

タイトルから野球が中心の物語を想像するかもしれませんが、実際には野球のシーンは冒頭に少しあるのみです。物語の大部分は、おトラさんが近所のトラブルを解決したり、困っている人を助ける様子を描いています。軽妙なユーモアと人情味あふれる展開が魅力の作品となっています。

ストーリーは、おトラさんが顔なじみの野球評論家・小西得郎の指導の下、近所の子供たちが草野球をしているところに夕飯を知らせる場面から始まります。おトラさんも野球に参加しますが、すぐに疲れてしまいます。

元気になったおトラさんは、弟の牛男が広島から来るため、馬子が迎えに行くのを手伝います。その際、牛乳屋が牛乳代の支払いを求めてきますが、日野江家は最近牛乳を飲んでいないため、おトラさんは戸惑います。しかし、結局は支払ってしまいます。

その後、近所の女中仲間から近くの林家に空き巣が入ったという知らせが入ります。おトラさんが林家に行ってみると、留守だったため急いで帰宅しますが、そこには見知らぬ男がいました。おトラさんはこの男を牛男と間違えてもてなします。

馬子が帰ってきた後、先ほどおトラさんが追い返した押売りが日野江家に現れますが、その押売りが実は牛男だったことが判明します。家の中を調べると、衣服などが盗まれていました。先ほどもてなした男は空き巣だったのです。

落ち込んだおトラさんですが、光が丘で新聞配達をしている野口正夫という少年と妹の秀子と出会います。彼らの母は病弱で寝たきり、父も行方不明で、正夫は新聞配達で生計を立てています。貧しいながらも前向きな正夫の姿に、おトラさんは励まされます。

ある日、正夫が牛乳泥棒の疑いをかけられます。しかし、正夫の予定していた配達先の牛乳もすでに盗まれていたことから、彼の容疑は晴れます。正夫を不憫に思ったおトラさんは、女中仲間と一緒にクイズ番組「メモリー・クイズ」に出演し、賞金を得ようとします。

番組では順調に勝ち進んでいきますが、おトラさんは観客の中に以前日野江家に侵入した空き巣を発見し、追いかけます。ドタバタの末に空き巣を逮捕しますが、その騒ぎで賞金は逃してしまいます。

それでも、おトラさんは野口兄妹のために、日野江家の窓際に椅子を設置し、女中仲間や近所の人々が演技をして、汽車旅行の雰囲気を味わわせる演出をします。

その後、警察署長がおトラさんに泥棒退治のお礼として一日署長を依頼します。おトラさんは快諾し、一日署長として勤労少年の正夫に感謝状を贈呈します。その際、群衆の中から一人の男が現れ、「牛乳泥棒は私です」と名乗り出ます。その男は野口兄妹の父親で、仕事がうまくいかず、空腹を満たすために牛乳を盗んでいたのです。おトラさんは彼を許し、野口親子は感謝の気持ちを表します。

最後に、小西は記者の質問に「何と申しましょうかァ、これぞ正に『おトラさんのホームラン』ですねェ」と答える場面で映画は幕を閉じます。

本作には、当時人気上昇中だった落語家の初代林家三平が近所の若い夫役で出演し、「どうも、すいません！」というギャグを披露しています。その他、有島一郎、水の也清美、川田孝子など、多くのベテラン俳優たちが脇を固めています。監督は小田基義、脚本は新井一、原島正夫、和田勝美が担当しました。同時上映作品は『続・社長三代記』でした。

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