お役所言葉

お役所言葉とは

お役所言葉（おやくしょことば）は、日本の行政機関が用いる特有の表現で、主に公文書や法律、条例などに見られるスタイルです。この言葉は、しばしば批判的に捉えられ、多くの文学者からも指摘を受けています。井上ひさしや三島由紀夫を含む著名な作家たちが、この言葉遣いに対して疑問を呈している点は興味深いです。

歴史的背景

この用語が広まる背景には、古くは勝海舟が明治政府の言葉遣いを見て皮肉を述べたという事例があります。1983年に発行された『'80年代世相語ガイド』では、特に「見直し」や「検討」、「抑制」といった言葉が『お役所不明確用語』とされ、その曖昧さが指摘されています。

1996年には、カナダ人作家のイアン・アーシーが自著『政・官・財の日本語塾』の中で「整備文」という概念を提唱しました。アーシーは、これらの言葉が一般市民を遠ざけ、政治的無関心を助長している可能性を指摘しました。この言葉の使い方が生まれた背景には、一部の自治体職員の自衛本能や、公文書に対する固い意識が影響を与えているとしています。

お役所言葉の特徴

お役所言葉は、特有のスタイルを持つ表現が多く見受けられます。その一部を以下に示します。

1. 「整備」の多用
行為を「整備」という言葉で表現することが多く、例えば「道路を建設・修繕する」を「道路整備」と言い換えます。

2. 「検討」の使用
調査や考慮を示す際に「検討する」という言葉が多用され、実際には何も行動に移さないケースが頻繁に見られます。

3. 「施設」での表現
建物や場所を「施設」と呼ぶことで、より抽象的な言い回しにしています。

4. 接尾語の使用
「○○性」や「○○化」といった抽象的な接尾語が好まれ、「活性化」や「充実化」などがその例です。

5. 音節を増やす表現
条文の接続助詞には「又は」「及び」「並びに」などを使用し、音の流れを複雑にする傾向があります。

6. カタカナ語の多用
「ノーマライゼーション」「アカウンタビリティ」など、専門的かつ多音節のカタカナ語がよく使われます。

7. 独自の表現
例えば、一般的な「座席表」ではなく「配席図」と表現するなど、職場内での独特な言葉遣いが見られます。

これらの特徴は、特に一般市民にとって難解で堅苦しい印象を与えるため、時折批判の対象となります。言葉の選び方がもたらす影響は大きく、時には国民の政治や行政への無関心を助長しているとも言えるでしょう。

改善の動き

これらの批判の声を受け、一部の自治体ではお役所言葉の改善に向けた取り組みが見られるようになりました。国民に分かりやすい言葉でコミュニケーションを図ることが求められています。これは、行政と市民との円滑なコミュニケーションを促進する大切なステップといえるでしょう。

お役所言葉が持つ特徴や問題点を理解し、それに対する改善が進むことで、より明確で市民に寄り添った行政が実現されることが期待されます。

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