ノーマライゼーション

ノーマライゼーションとは

ノーマライゼーション（normalization）とは、1950年代に北欧で生まれた社会福祉の理念で、「正常化」「標準化」を意味します。この理念は、障害を持つ人々も、健常者と同じように地域社会で生活し、社会の一員として活動できるべきだという考えに基づいています。

ノーマライゼーションの背景

従来の社会福祉では、障害者を施設に隔離する傾向があり、障害者の意思や尊厳が尊重されない状況がありました。ノーマライゼーションは、このような状況に対する反省から生まれました。障害者を社会から排除するのではなく、障害があっても当たり前に生活できる社会こそが正常であるという考え方が、ノーマライゼーションの根本にあります。

ノーマライゼーションの概念

ノーマライゼーションは、障害を持つ人々に変化を求めるのではなく、社会のあり方そのものを変えることで、誰もが生きがいを見つけ、役割を担える社会を目指します。具体的には、以下のような取り組みが含まれます。

バリアフリー化: 障害者が移動や活動において不自由を感じないよう、物理的なバリアを取り除くこと。
情報保障: 障害者が情報を取得し、社会参加するための手段を整備すること。
インクルーシブ教育: 障害のある子どもとない子どもが共に学ぶことができる環境を整えること。
就労支援: 障害者が自立した生活を送るために、就労機会を創出すること。

ノーマライゼーションの発展

ノーマライゼーションの概念は、デンマークのニルス・エリク・バンク＝ミケルセンとスウェーデンのベングト・ニリエによって広められました。アメリカでは、「障害を持つアメリカ人法（ADA法）」が制定され、ノーマライゼーションの理念が法的に整備されています。

日本では、2003年に支援費制度が導入され、障害者の地域生活への移行が促進されました。厚生労働省も、障害の有無に関わらず多くの人が地域社会で活躍できる社会の構築を政策として掲げ、ノーマライゼーションの理念に沿った取り組みを進めています。

ノーマライゼーションの課題

ノーマライゼーションは、すべての障害者にとって理想的な社会を実現しているわけではありません。特に重度の知的障害や精神障害を持つ人々に対する生活保障は十分とは言えず、地域社会とのトラブルも発生しています。また、犯罪を繰り返す障害者に対する適切な対応も課題となっています。

日本におけるノーマライゼーション

日本では、ノーマライゼーションを「等生化」と言い換える提案もあります。しかし、一般的には「ノーマライゼーション」という言葉が広く使われています。

国土交通省も、ノーマライゼーションの理念に基づき、住宅や社会資本のインフラ整備を推進しており、高齢者や障害者を含むすべての人が、社会の一員として自立し、尊厳を持って生活できる社会を目指しています。

関連概念

バリアフリー: 障害者にとっての障壁を取り除くこと。
ユニバーサルデザイン: すべての人が利用しやすいように製品や環境をデザインする考え方。
アクセシビリティ: 情報やサービスへのアクセスしやすさ。
情報保障: 情報取得の機会均等。
* インクルーシブ社会: 誰もが排除されることなく、地域で共に生活できる社会。

ノーマライゼーションは、障害のある人もない人も、共に生きる社会を実現するための重要な理念です。この理念に基づいた取り組みを継続することで、誰もがその人らしく生きられる社会を目指すことができます。

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