お父さんはお人好し 家に五男七女あり

『お父さんはお人好し 家に五男七女あり』：賑やかな大家族の物語

1958年2月18日、東宝の配給によって公開された『お父さんはお人好し 家に五男七女あり』は、日本の高度経済成長期を背景に、大勢の子供を持つ家族の日常を描いたホームドラマです。モノクロ、スタンダードサイズで製作された本作は、NHKラジオ第1放送で人気を博したラジオドラマ『お父さんはお人好し』の映画化作品であり、シリーズ6作目にあたります。 これまでの5作品は大映が製作しましたが、本作から東宝が製作を引き継いだ点が大きな変化と言えるでしょう。

温かい家族像と豪華キャスト

映画は、お人好しの父親、藤本阿茶太郎（花菱アチャコ）と、その妻おちえ（浪花千栄子）を中心に展開します。二人の周りには、5人の息子と7人の娘、そしてそれぞれの配偶者たちが集まり、賑やかな毎日を送っています。 個性豊かな子供たちとその家族の生活は、時に騒がしく、時に微笑ましく、観客の心を温かく包み込みます。

花菱アチャコと浪花千栄子という、当時を代表する喜劇役者の共演は、映画の見どころの一つです。彼らの絶妙な掛け合いと、コミカルな演技は、作品全体に軽妙な雰囲気をもたらしています。 さらに、香月京子、森川金太郎、上田節子、川上賢二ら、実力派俳優陣が脇を固め、それぞれのキャラクターを丁寧に演じ分けています。 多くの子供役のキャスティングも、作品全体の活気と自然な家族感を演出する上で重要な役割を果たしています。

高度経済成長期の家族像

本作は、高度経済成長期の日本社会における家族像を反映した作品と言えるでしょう。 家族の規模が大きく、世代間で価値観のずれが生じる場面も見られますが、それらを通して、家族の絆の強さや、温かさ、そしてユーモアが描かれています。 現代の観客が見ても、普遍的な家族の愛や、人間関係の機微を感じ取ることができるでしょう。

スタッフと制作体制

本作の製作には、宝塚映画製作所の杉原貞雄氏と青柳信雄氏が携わっています。監督も青柳信雄氏が務め、長沖一氏の原作を新井一氏が脚本化。神津善行氏による音楽、西垣六郎氏による撮影など、多くのベテランスタッフが参加し、映画の高いクオリティを支えました。 その他、照明、美術、録音といった各部門のスタッフも、細部まで丁寧に作り込まれた作品となっています。

同時上映作品

本作は、『母三人』（監督：久松静児、主演：山田五十鈴）と同時上映されました。 異なるテーマの作品が同時に公開されることで、観客はより多様な映画体験を楽しむことができたでしょう。

作品全体の評価

『お父さんはお人好し 家に五男七女あり』は、高度経済成長期における家族の温かい姿を描いた、日本映画史に残る名作の一つと言えるでしょう。 豪華キャスト、丁寧な演出、そして普遍的なテーマは、現代においても多くの観客に感動と共感を呼び起こすでしょう。 賑やかな大家族の物語を通して、家族の大切さ、そして人生の喜びを改めて考えさせられる、忘れられない作品です。

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