お由羅騒動

お由羅騒動について

お由羅騒動（おゆらそうどう）は、江戸時代末期に薩摩藩で発生した内紛であり、藩主島津斉興の後継者を巡る争いが主な原因となりました。別名「高崎崩れ」や「嘉永朋党事件」とも呼ばれるこの事件は、藩主の意向や家臣たちの対立が複雑に絡み合い、歴史に大きな影響を与えました。

背景

お由羅の方と呼ばれる女性は、江戸の町で生まれた娘であり、後に島津斉興の側室となりました。彼女は息子である久光を藩主にしようと画策し、正室の子である斉彬を排除しようとします。この状況は一方的にお由羅の方の意志だけではなく、斉興や家老・調所広郷の意向も反映されていました。彼らは斉彬が財政を再び悪化させるのではないかと懸念し、久光を支持していたのです。

一方、斉彬の側には早期の家督相続を望む勢力がありました。斉彬自体は将軍家に親戚が多く、彼の知識や資質が期待されていました。特に琉球を実効支配し、外国とのやり取りが増加していたこの時期、外国事情に明るい斉彬が藩主に就くことは藩にとっての安心材料と考えられていました。

発端

久光は父の斉興によって種子島家から重富島津家へ養子入りさせられ、この決定によって藩主候補としての立場を確保しました。斉興は嫡子である斉彬に家督を譲ろうとしませんでした。これが斉彬が40歳を超えても未だに世子として居るという異常な事態を生み出しました。

藩内では斉興と家老調所に対する不満が高まっており、斉彬と若手藩士たちは「斉興隠居」を唱えました。嘉永元年、彼らは琉球での密貿易を密告し、斉興と調所の失脚を図ります。しかし、調所は急死するものの、斉興は藩主の地位にとどまり続けました。これがさらなる対立を生む結果となります。

お由羅の方の呪詛疑惑

お由羅の方は自らの子供久光の立身出世を願っていましたが、斉彬派から「呪詛」を疑われる事態が起きました。斉彬の子女が育たないことが原因で、お由羅の方が関与しているのではと噂されましたが、これは事実であるかは不明です。一般には、当時の死因や育成の問題は様々な要因が絡むため、一概には判断できません。

事件経過

事件は急速に発展し、斉彬派や久光派の家臣たちの間で緊張が高まっていきました。嘉永2年、斉彬の子供の夭逝を機に、両派の対立は一触即発の状況となります。斉彬の側近が久光らの襲撃を企てたとのことで捕縛され、数名が切腹を命じられました。

次に、斉彬派の重鎮が相次いで処罰され、藩内は混乱の渦に巻き込まれます。このような状況下において、斉彬の後見役が失われ、大きな打撃を受けました。

騒動後

騒動後、斉興とその側近は圧力を受けるものの、脱藩した家臣たちは他藩に逃げ込みました。最終的には、将軍家の命令により斉興は隠居し、家督を斉彬に譲ります。また、お由羅の方もこの騒動の影響に関して、大きな処分を受けることはありませんでした。

この事件は薩摩藩内での権力構造の変化をもたらし、斉彬の急死以降もその影響は残りました。斉彬が藩政をどのように導いていくのか、そして家臣たちとの関係がどう変わるのかは、その後の薩摩藩の運命に深く関わっていくこととなりました。

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