かたづの!

かたづの!

中島京子の小説『かたづの!』は、里中満智子によって漫画化もされた歴史作品です。舞台は江戸時代初期の八戸と遠野。南部氏の一族である根城南部氏21代当主・清心尼（せいしんに）の波乱に満ちた生涯を、一本角の羚羊（かもしか）の視点から描いています。

あらすじ

物語は、主人公である祢々（ねね）が10歳で結婚することから始まります。しかし、夫や息子との死別を経て、祢々は根城南部氏の当主となることを余儀なくされます。南部宗家からの再婚の命を拒否するため、仏門に入り清心尼と呼ばれるようになった彼女は、八戸や遠野で次々と起こる難題に、家臣を犠牲にしないことを第一に奔走します。

登場人物

祢々（ねね）
本作の主人公。10歳で直政と結婚し、夫と息子を亡くしたのち、根城南部氏の当主となる。南部利直からの再婚命令を拒み出家し、清心尼となる。領民を第一に考え行動する。
片角（かたづの）
本作の語り部。雄の羚羊で、祢々に命を救われたことから交流を持つ。一本しかない角は七面天女の化身とされ、根城で手厚く扱われる。死後、角に意識が宿り、祢々の生涯を見守る。
南部 利直（なんぶ としなお）
三戸南部氏第27代当主で、祢々の叔父。根城南部氏の領地を支配しようと策略を巡らせる。
八戸 直政（はちのへ なおまさ）
祢々の夫で、根城南部氏第20代当主。越後国の高田城築城奉行中に病に倒れ死去。
新田 三五郎（にいだ さんごろう）
根城南部氏の家臣。後に祢々の次女・愛と結婚し、根城南部氏第22代当主となる。
福（ふく）
祢々の長女。新田三五郎と婚約していたが、利直の策略で別の男性と結婚させられる。
愛（あい）
祢々の次女。姉の婚約者であった三五郎との結婚に複雑な感情を抱く。
妙（たえ）
福の娘で、祢々の孫。夫の死後、尼僧となり遠野へ移住する。
川辺 孝之進（かわべ こうのしん）
河童の大将。祢々に求婚するも断られ、その後も彼女を支援する。
典屋 与平次（てんや よへいじ）
旅の猿回し。三戸南部の間者と疑われるが、八戸に住むことを許される。

受賞歴

第3回河合隼雄物語賞
第4回歴史時代作家クラブ賞作品賞
第28回柴田錬三郎賞
王様のブランチブックアワード2014大賞

関連事項

かたづの! 集英社ビジネス書
八戸典屋頭松太夫
貴婦人と一角獣
東郷寺（作中の「ふちゅうのとうごうじ」。祢々の子孫にあたる南部日実、南部光徹が住職を歴任。）

『かたづの!』は、歴史小説でありながら、女性の生き方や家族の絆、そして領民への愛を描いた感動的な作品です。ぜひ一度手に取って、その世界に浸ってみてください。

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