きく2号

きく2号（ETS-II）

概要

きく2号（Engineering Test Satellite - II）は、日本が開発した初の静止衛星であり、1977年に宇宙開発事業団（NASDA）によって打ち上げられました。この衛星は、静止衛星の打ち上げや追跡管制、軌道保持、姿勢制御に関する技術的な実験を目的としています。また、通信衛星用の通信機器が、宇宙環境においてどのように機能するかを確認するための試験も行われました。

開発の過程

きく2号の開発は1971年度に始まりました。当初の概念設計は高々度衛星（HAS-A/B）として行われ、1972年度には技術試験衛星II型としての予備設計が進められました。1973年度にはメーカーの選定がなされ、基本設計とエンジニアリングモデル（EM）の製作に着手しました。1974年度には詳細設計やその審査が行われ、プロトフライトモデル（PFM）の製作に入ります。

PFMは1976年の2月から6月にかけてシステム認定試験を受け、その後筑波宇宙センターにて保管されました。フライトモデル（FM）の製作も同年2月から始まり、6月に受け入れ試験が実施されました。10月30日には筑波宇宙センターに納入され、11月には種子島宇宙センターへと輸送されました。

打ち上げと運用

1977年の2月23日、きく2号はN-Iロケット3号機を用いて種子島から打ち上げられ、打ち上げから25分後には静止トランスファ軌道（GTO）に投入されました。その後、姿勢を変更しながら2月26日にドリフト軌道に入ることに成功しました。衛星の姿勢は軌道面に垂直に引き上げられ、4回の軌道制御を経て、3月5日に東経130度の静止軌道に投入されました。これにより、日本初の静止衛星としての役割を果たしました。

打ち上げ以降の3月下旬までは機能確認が行われ、その後は電波伝播実験や通信機器の動作確認が続けられました。特に、4月中旬には電波伝播実験用の送信機の連続動作試験が行われ、4月下旬にはその予備実験が実施されました。5月下旬からは、郵政省の電波研究所でミリ波帯での電波伝播実験がスタートしました。

定常運用は1977年8月22日に終了しましたが、きく2号は1990年12月10日まで運用され、さまざまなデータを収集しました。特にミリ波帯の電波伝播実験から得られたデータは、アメリカ航空宇宙局（NASA）など、世界中の宇宙通信研究に活用されました。

この成果は日本の宇宙通信技術の発展に寄与し、将来的な衛星開発の基盤を築くことに繋がりました。きく2号は、技術的な挑戦と成果を象徴する衛星として、その名を歴史に刻むこととなります。

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