きく8号

きく8号について

概要

きく8号（きく8ごう）は、日本の宇宙航空研究開発機構（JAXA）、情報通信研究機構（NICT）、そして日本電信電話株式会社（NTT）が共同で開発した技術試験衛星です。開発時には技術試験衛星VIII型（ETS-VIII）として認知され、一般に愛称で呼ばれることが通例ですが、今回は打ち上げ前にその愛称が公表されました。この点は「だいち」と類似しています。

目的

当衛星の主な目的は、2006年当時の通信環境において、携帯電話に代表されるようなハンディタイプ端末と直接連携して通信を行う技術を確立することにありました。それまで、携帯電話は地上の基地局を介する必要があったため、特に山間部や海上では通信が制約されていました。また、災害発生時には通話が難しくなる場合も多く、この問題を解決することを目指していました。きく8号は、特にこれらの地域で安定した通信サービスを提供できることを目指したのです。さらに、静止衛星を活用した測位システムの実験も行われる予定でした。ミッション期間は3年、設計上の衛星寿命は10年とされています。

機体仕様

きく8号は打ち上げ時に2,800 kgの重量を持ち、設計寸法は本体が2.45 m × 2.35 m × 7.3 m、全長は約40 mに達します。特に特徴的なのは、その大型展開アンテナです。このアンテナは片側が19 m × 17 mという大きさを誇り、衛星の機能性を大きく向上させます。

アンテナは宇宙空間で展開する際に、折りたたまれた状態から傘を開くように展開します。この際、金メッキが施されたモリブデン線で構成されたメッシュが使用され、設計の精緻さが際立ちます。この技術は、計画中止になったASTRO-Gでも適用される予定でした。また、きく8号は日本の人工衛星史上、初めてセシウム原子時計を搭載した衛星でもあります。

アンテナ関連の試験機

きく8号に搭載される大型展開アンテナの部分モデルとして、LDREX（Large Deployable Reflector Experiment）が開発されました。この試験機は、きく8号のアンテナが宇宙で適切に展開できるかを確認するためのものです。LDREXは2000年に打ち上げられましたが、当初のLDREXは正常に展開できませんでした。その後、LDREX-2が2006年に打ち上げられ、正常な展開を確認することができました。

ミッションの経過

きく8号は2006年12月18日に打ち上げられ、12月25日には大型展開アンテナの展開を開始しましたが、受信アンテナのみが展開されてしまいました。翌日には送信アンテナの展開が完了し、その後、衛星の姿勢が安定したことが確認されました。

2007年1月には、衛星が所定の位置で静止化されましたが、その後、受信側の低雑音増幅器に異常が発生しました。この問題にも拘らず、きく8号は様々な実験を通して通信機能を確認し、2008年には防災訓練に参加するなどの実績を上げました。

2011年には、東北地方太平洋沖地震の影響で、岩手県大船渡市に地上アンテナを設置し、インターネット接続を提供しました。このように、きく8号は災害時の通信支援にも重要な役割を果たしました。最終的には、2017年1月に運用を終了しています。

キャッチフレーズとキャラクター

きく8号のキャッチフレーズは「大きなアンテナがひらく未来の扉、届ける安心」とし、大型衛星を通じた新たな携帯通信の展望を示しています。また、シンボルキャラクター「きくはちぞう」は、日本においてコミュニケーションの象徴ともなる存在です。

このように、きく8号は日本が誇る衛星通信の進歩を支える重要なプロジェクトであり、多くの実績を残しました。

もう一度検索