きらり (人工衛星)

きらり（OICETS）– 光衛星間通信実験衛星

「きらり」（Optical Inter-orbit Communications Engineering Test Satellite: OICETS）は、日本の宇宙航空研究開発機構（JAXA）が打ち上げた光通信実験衛星です。この衛星は、レーザー光を使って数万キロメートル隔てた衛星同士の通信を試みるための技術実験を目的としています。さらに、この実験は欧州宇宙機関の「ARTEMIS」と連携して行われました。

打ち上げと目的

「きらり」は、2005年8月24日午前6時10分（日本時間）に、カザフスタンのバイコヌール宇宙基地から打ち上げられました。この打ち上げは、光通信技術の実証試験を目的としており、同年の12月9日には、世界初となる双方向の光衛星間通信に成功しました。

光通信の主要な利点は以下の通りです：

• - 安全性: 第三者による傍受が難しい。
• - 高品質: 電磁誘導ノイズの影響を受けにくいため、大容量データの安定した送受信が可能。
• - 効率性: 小型化・軽量化が実現し、さらに低電力で高品質な通信が可能になる。

技術的課題

しかし、衛星間の距離は最大で4万キロメートルを超え、それぞれが異なる軌道を高速で回っているため、光通信を実現するには高度な技術が求められます。「きらり」では、これらの技術的課題を克服するために、次世代の通信技術が使用されました。

経緯と打ち上げの挑戦

もともと「きらり」は、2002年にJ-Iロケットでの打ち上げを予定していましたが、J-I計画が凍結されたため、打ち上げが難航しました。光通信相手のARTEMISの寿命が迫っていたため、急遽国産ロケットでの打ち上げが検討されましたが、H-IIAロケットの失敗や他のロケットの性能限界から、最終的にウクライナのドニエプルロケットによる打ち上げが決定されました。これにより、別の小型技術実証衛星「れいめい」と共に打ち上げられることになりました。

光学系と通信成果

「きらり」の光学系には、直径26cmの反射望遠鏡が搭載されており、波長は0.8μm帯、ダウンリンク速度は50Mbps、アップリンク速度は2Mbpsとされています。2005年12月9日には、静止衛星ARTEMISとの間でのレーザー光による双方向通信実験に成功しました。さらに2006年3月31日には、低軌道を周回する「きらり」と光地上局との通信実験にも成功しました。これらの成果により、OICETSプロジェクトは、多くの評価を受け、様々な賞を受賞しています。

運用の終了とその後

「きらり」は、2006年10月16日に定常運用を終了し、その後は一部機器の寿命評価のためのデータ取得を行いました。最終的に、2009年9月24日に運用を終了し、約4年間の運用を経ての停止となりました。

未来への展望

政府は、光通信技術を用いることで、衛星間通信機器の小型化や軽量化が可能になると期待しています。具体的には、情報収集衛星向けの光データ中継衛星を導入する方針を打ち出しており、2019年度の打ち上げを目指して関連予算が盛り込まれる予定です。この技術は、他国による妨害や傍受を防ぐためにも重要です。

「きらり」は、光通信技術の実現に向けた実験であり、その成功が今後の通信技術の進化につながることが期待されています。

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