きりはまビーチ駅

きりはまビーチ駅：夏の思い出を乗せて消えた、短い生涯の駅

兵庫県豊岡市（旧城崎郡竹野町）に存在した、JR西日本山陰本線の臨時駅「きりはまビーチ駅」。その短い歴史と、海水浴客を乗せて走った列車の物語を紐解きます。

海水浴客を運んだ、夏の臨時駅

きりはまビーチ駅は、文字通り切浜海水浴場へのアクセスを目的として、夏季限定で運行された臨時駅でした。1985年から1986年にかけては「切浜海水浴場駅」として、その後1994年から1996年にかけては「きりはまビーチ駅」として、その短い生涯を刻みました。

駅は、山陰本線の竹野駅と佐津駅の中間地点に位置し、利用客の増加に期待が寄せられました。特に1990年代の営業期間中は、特急列車「はまかぜ」の臨時停車も実施されるなど、JR西日本も力を入れていたことが分かります。しかしながら、利用客の伸び悩みは克服できず、1996年の営業を最後に廃止という、切ない幕切れを迎えることとなりました。

簡素な設備と、変化に富む乗降方法

きりはまビーチ駅の規模は非常に小さく、単式ホーム1面1線のシンプルな構造でした。特徴的なのは、そのホームが仮設足場で組まれていたことで、営業期間以外には撤去されていた点です。

開業初年度は、ホームすら存在せず、キハ58系気動車2両編成による臨時列車が切浜海水浴場の脇に停車。乗客は、列車の連結面寄り2ヵ所の扉と地面の間に設置された歩み板を使って乗降していました。まさに臨時の駅としての、簡素さと工夫が凝らされた様子が伺えます。

周辺環境とアクセス

駅周辺は、文字通り切浜海水浴場がすぐそばに位置していました。海水浴客の利用を第一に考えて作られた駅であることが良くわかります。また、兵庫県道・京都府道11号香美久美浜線にもアクセスが良く、周辺地域への移動にも便利な立地でした。

惜しまれつつも消えた駅

きりはまビーチ駅は、多くの海水浴客を乗せ、夏の思い出を運ぶ役割を担っていましたが、残念ながら利用客増加の期待に応えることができず廃止となりました。しかし、その存在は、地域住民の記憶や、かつてこの地を訪れた人々の記憶の中に、夏の短いながらも鮮やかな思い出として刻まれていることでしょう。今では廃駅となってしまいましたが、その歴史は、日本のローカル線の盛衰の一端を物語る貴重な存在といえるでしょう。

そして未来へ

きりはまビーチ駅の存在は、地方の交通事情と、観光客の動向が複雑に絡み合った結果であると言えるでしょう。その歴史を学ぶことで、地域活性化や観光戦略を考える上で、貴重な教訓を得ることができるのではないでしょうか。

現在は、たけの観光協会のウェブサイトで、この駅の「今はなき 切浜ビーチ駅」として紹介されています。興味のある方は、そちらも合わせてご覧になってみてください。

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