き裂

材料工学におけるき裂の理解

材料工学では、き裂（クラック）は材料に発生する欠陥として重要な概念となります。具体的には、き裂とは材料内の原子面が局所的に分離し、破壊が生じた状態を指します。弾性論の見地から見ると、き裂の先端は切り欠きと同じように扱うことができ、さらに破壊力学では、原子間の距離がこの切り欠きの曲率半径の下限として考えられています。

き裂の影響と応力集中

材料に外力を加えると、き裂の先端部には高い応力が集中します。この集中した応力により、先端部分は降伏して塑性変形を引き起こします。グリフィス理論によれば、き裂にかかるエネルギー、即ちエネルギー解放率が材料の破壊靱性を超えると、き裂はその長さを延ばし続けるという「き裂進展」が始まります。この過程は非常に迅速であり、しばしば材料全体の破壊に至ることがあります。

応力の特異点と応力拡大係数

き裂周辺の理論的な応力分布を評価する際には、先端に特異点が現れるため、き裂の応力集中係数を直接測定することは難しいのです。このため、応力拡大係数が導入され、塑性変形を考慮した解析が行われます。この概念を提唱したジョージ・ランキン・アーウィンは、流体力学の座標変換技術を利用し、き裂進展に関するシンプルな式を生み出しました。

き裂のサイズと安全性

図1のように、部材にかかる平均的応力をσとし、応力の方向に垂直で長さaのき裂が持つ駆動力K（応力拡大係数）を示すことで、どの程度のき裂サイズまでが強度の安全性を維持できるかが理論的に示されています。これにより、き裂の存在がどのように材料の強度に影響を与えるかを理解することができます。

まとめ

以上のように、材料工学におけるき裂の研究は、破壊力学や応力集中の概念を深く理解するための重要な要素です。今後の研究や実用においても、き裂に関する理解が新しい材料の開発や安全性評価に寄与することが期待されています。

参考文献

• - 小林英男『破壊力学』（初版）共立出版、1993年4月。ISBN 4-320-08100-5。
• - 村上敬宜『応力集中の考え方』（第2版）養賢堂、2009年2月。ISBN 978-4-8425-0374-5。

関連項目

• - 破壊
• - 材料強度学
• - 破壊力学
• - 応力ひずみ線図
• - 塑性

もう一度検索