くつろぎ (高崎鉄道管理局)

くつろぎ

「くつろぎ」は、かつて日本国有鉄道（国鉄）が1983年（昭和58年）に登場させた和式客車のジョイフルトレインです。レジャーや団体旅行向けに特別な改造が施された車両群の一種で、その名の通り、ゆったりと過ごせる空間が提供されました。国鉄の分割民営化に伴い、1987年（昭和62年）4月からは東日本旅客鉄道（JR東日本）に引き継がれ、1999年（平成11年）まで運用されました。

概要

本車両は、国鉄の高崎鉄道管理局が企画し、1983年に投入された車両です。当時の人気が高まっていたジョイフルトレインの中でも、特に和の雰囲気を重視したお座敷列車として設計されました。ベースとなったのは、急行形客車として広く使われていた12系客車です。全車両がこの12系客車から改造されており、編成の両端を担う車両はスロフ12形800番台に、中間に入る車両はオロ12形800番台となりました。これらの改造作業は、国鉄の幡生工場（現在のJR西日本下関総合車両所本所）によって行われました。

車両構成と愛称

「くつろぎ」は全6両で編成が組まれていました。各車両には、旧上野国を中心に北関東地方にそびえる山の名前が愛称として名付けられ、親しみやすさを高めていました。全ての車両がグリーン車扱いとされ、団体旅客向けの特別料金が適用されました。各車両の形式と愛称は以下の通りです。

1号車：スロフ12 822（旧スハフ12 109） - 「赤城」
2号車：オロ12 841（旧オハ12 170） - 「榛名」
3号車：オロ12 843（旧オハ12 175） - 「妙義」（サロン室併設）
4号車：オロ12 842（旧オハ12 176） - 「浅間」（サロン室併設）
5号車：オロ12 844（旧オハ12 177） - 「秩父」
6号車：スロフ12 821（旧スハフ12 108） - 「男体」

特徴的な客室設備

「くつろぎ」の最大の特徴は、その客室空間にありました。車内は全面が畳敷きとなっており、靴を脱いでリラックスできる環境が提供されました。各座席には、使用しない際には脚を畳んで収納できるタイプのテーブルが配置されていました。客室の一部は、衝立や襖、そしてカーテンを用いて仕切ることが可能で、団体内で区画を分けたり、通路からの視線を遮ったりといった使い方ができました。また、一方の車端部には小さな演台が設置されており、スタンドマイクなどを置いて簡易的なイベントを行うことも想定されていました。その反対側の車端部には、和室の雰囲気をさらに高める床の間が設けられていました。

中間車のうち、3号車と4号車には、ソファーセットが置かれたサロン室が設けられていました。このサロン室は、客室部分とはパーテーションによって区切られており、グループ内での歓談や休憩スペースとして利用できました。ただし、同時期に活躍した他の和式ジョイフルトレイン、例えば「江戸」や同じ高崎の「やすらぎ」に設けられていたような大型の展望室は、「くつろぎ」には装備されませんでした。

運行と塗装

本車両は主に首都圏を中心としたエリアで、団体専用列車として運用されました。利用団体の規模が大きい場合には、同じ高崎客車区に所属していた和式ジョイフルトレイン「やすらぎ」と連結して、12両編成での運用も見受けられました。また、JR線だけでなく、上信電鉄の上信線や秩父鉄道の秩父本線といった私鉄線への乗り入れも行った実績があります。

登場時の車体塗装は、青20号をベースカラーとし、窓下にクリーム10号の帯が1本配されたものでした。しかし、1987年3月からは、より落ち着いたシックな装いへと変更されました。新しい塗装はぶどう色を基調とし、車体中央部に白帯が、そして窓周りと車体裾には金色の帯が入れられました。この新しい塗装は、同時期にぶどう色と白帯の塗装に変更された電気機関車EF64 1001号機と意匠が揃えられており、同機が「くつろぎ」の牽引を担う機会が多くありました。

引退とその後

「くつろぎ」は長年の活躍により老朽化が進み、1999年（平成11年）9月29日をもってその営業運転を終了しました。引退に際しては、動態保存されている蒸気機関車D51 498号機が牽引するさよなら運転が行われ、多くのファンに惜しまれつつその役目を終えました。営業運転終了後、車両は一旦、群馬県の横川駅に全車が留置されました。

その後の処遇として、編成の1号車と2号車は、横川駅近傍に開設された「碓氷峠鉄道文化むら」にて保存・展示されることとなりました。一方、残る3号車から6号車までの4両については、残念ながら2006年（平成18年）1月に現地で解体されることとなり、その姿を消しました。現在、「くつろぎ」の面影を見られるのは、碓氷峠鉄道文化むらに保存されている2両のみとなっています。

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