くにがみ型巡視船

くにがみ型巡視船の概要

くにがみ型巡視船は、海上保安庁の1000トン級巡視船（PL型）です。従来のPL型巡視船であるしれとこ型の後継として、老朽化による代替と、尖閣諸島における警備強化を目的に建造されました。あそ型やはてるま型のような高速船とは異なり、航続力や搭載能力を重視した設計が特徴です。

開発の経緯

海上保安庁は、これまでも様々なPL型巡視船を運用してきました。しれとこ型は多数建造され長期間運用されましたが、2010年代には老朽化が進み、代替が必要となりました。当初、高速性能を重視したはてるま型で代替する計画もありましたが、汎用性の高いしれとこ型の機能を完全に代替するには限界がありました。そこで、速力を犠牲にして汎用性を高めた、新たな1000トン級巡視船の開発が決定しました。それがくにがみ型です。

最初の2隻の建造では、高性能化によるコスト高騰が問題となりました。そのため、その後建造されたいわみ型では、ヘリコプター甲板を省略するなど、コスト削減を図りました。しかし、尖閣諸島の警備強化のため、いわみ型では不十分と判断され、くにがみ型の建造が再開されました。

設計

くにがみ型は、従来の排水量型船型を採用し、船体には高張力鋼と軟鋼、上部構造物にはアルミニウム合金を使用しています。低速航行時の安定性を向上させるため、フィンスタビライザーに加え、減揺タンクも搭載しています。これにより、乗員の負担軽減に貢献しています。

船尾にはヘリコプターの発着甲板が設けられており、ヘリコプターへの電源や燃料供給も可能です。船橋には機関管制盤2基と、OIC（Operation Information Center）室が配置され、通信区画や武器管制区画も備えています。窓や囲壁は防弾仕様となっています。

主機関は、出力6,600kWのディーゼルエンジンを2基搭載しており、高い推進力を確保しています。推進器はスクリュープロペラです。速力は23ノットと、高速船に劣るものの、警備任務に十分な速度を確保しています。また、はてるま型で不評だった舷側排気は廃止され、従来通りの煙突が採用されています。

装備

主兵装は、JM61-RFS 20mm多銃身機銃です。赤外線捜索監視装置と連接し、目標追尾型遠隔操縦機能（RFS）を備えています。一部の船艇には、より高度な射撃管制機能（FCS）を備えたブッシュマスターII 30mm単装機銃が搭載されています。

その他、赤外線捜索監視装置、遠隔監視採証装置、高圧放水銃などを搭載しています。搭載艇として、高速警備救難艇と複合艇を備えています。救難強化型の船艇では、救難機材庫と搭載艇の種類が変更されています。

運用

くにがみ型は、尖閣諸島周辺海域の警備任務に重要な役割を担っています。特に、石垣港を拠点とする10隻は、尖閣諸島領海警備専従部隊として運用されています。複数クルー制を採用することで、高い稼働率を確保しています。

派生型

くにがみ型をベースとした巡視船が、フィリピン沿岸警備隊向けに建造されました。これはテレサ・マグバヌア型と呼ばれ、中型ヘリコプターの運用が可能な格納庫と甲板を備えています。

まとめ

くにがみ型巡視船は、日本の海上保安体制における重要な戦力です。老朽化した巡視船の更新と、尖閣諸島における警備強化という二つの大きな役割を担い、その高い運用能力と多様な装備により、日本の海上安全保障に大きく貢献しています。今後も、老朽船の更新や増強を継続していくことが予想されます。

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