くまもとアートポリス

くまもとアートポリス：30年以上にわたる建築と文化の創造

くまもとアートポリス（Kumamoto Artpolis、略称：KAP）は、熊本県が1988年から展開する、建築と都市計画を通して文化の向上を目指す壮大なプロジェクトです。当時の熊本県知事、細川護煕氏の構想から生まれました。高度経済成長期の画一的な都市開発への反省から、「熊本らしい田園文化圏の創造」という目標が掲げられ、後世に残る文化の創造を目指した取り組みが始まりました。

このプロジェクトの着想は、細川知事が1987年に西ドイツで開催されたベルリン国際建築展（IBA）を視察した際に得たと言われています。IBAの成功例に触発され、熊本県独自の建築文化の醸成、都市環境デザインの向上を目的とする、画期的な試みがスタートしました。プロジェクトの名称は、細川護煕氏と建築家磯崎新氏の会談で決定したとされています。

くまもとアートポリスの特徴：コミッショナー制度と建築家の登竜門

2022年1月現在、115件ものプロジェクトが竣工しているくまもとアートポリスは、海外メディアからも「県全体が建築博物館」と称賛されるほど、独特の景観を形成しています。

その最大の特徴は、コミッショナー制度です。通常、公共建築の設計者は競争入札で決定されますが、くまもとアートポリスでは、コミッショナーが設計者を自由に選定する権限を有しています。この制度により、磯崎新氏、高橋靗一氏、そして現コミッショナーである伊東豊雄氏など、日本を代表する著名な建築家たちが、数多くの作品を生み出しました。

また、若手建築家にも公共建築設計の機会を提供する「登竜門」としての役割も担っています。そのため、くまもとアートポリスは、東京や大阪といった大都市と同様に、日本の建築界において無視できない存在感を示しています。さらに、民間施設の参加も可能ですが、その事例は少ないです。竣工した建物には「K.A.P.」の銘板が埋め込まれ、設計者と施工者名が明記されています。

くまもとアートポリスは、全体を統括するグランドデザインを持たず、各建築物は設計者に委ねられています。この自由度の高さから、多様な建築様式が共存する、魅力的な景観が生まれています。

30年以上にわたって継続しているこのプロジェクトは、他の地域では見られない類まれな成功例です。富山県、岡山県、広島市などでも同様の試みがなされてきましたが、4代にわたる知事の継続的な支援により、くまもとアートポリスだけがその制度を維持し続けています。

くまもとアートポリスの評価：賛否両論と国際的な注目

くまもとアートポリスのプロジェクトは数々の賞を受賞しており、建築界では高い評価を得ています。しかし一方で、生活空間への配慮不足や住民参加の不足を指摘する声もあります。「点から線へ、線から面へ」という環境デザインの理念も、十分に機能しているとは言えないとの批判もあります。

一方、海外、特にアジア諸国からは高い評価を受けており、文化、まちづくり、地方都市活性化のモデルケースとして、多くの関係者が見学に訪れています。修学旅行コースに含まれる施設もあるなど、熊本県観光の一翼を担う存在にもなっています。

くまもとアートポリスの軌跡：1987年から現在まで

1987年の細川知事の欧州視察を契機に始まったこのプロジェクトは、1988年の発足以降、数多くのシンポジウム、コンペティション、展覧会などを開催し、活動を展開してきました。その過程において、多くの建築物が生まれ、また、地域の活性化にも貢献してきました。 年表に示されているように、様々な取り組みが継続的に行われ、現在も進化を続けています。

関係者

長年にわたるプロジェクトの成功には、初代コミッショナーの磯崎新氏をはじめ、歴代のコミッショナー、アドバイザー、そして関係各所の協力が不可欠でした。 彼らの尽力なくして、くまもとアートポリスは存在し得ませんでした。

参加プロジェクトの例

くまもとアートポリスは、熊本県内各地に広がる様々な建築物を含みます。有名な熊本城や水前寺成趣園なども含まれ、歴史的建造物と現代建築が調和する、独特の景観を形成しています。

まとめ

くまもとアートポリスは、単なる建築プロジェクトではなく、地域文化の創造と発展に大きく貢献する、革新的な試みです。その成功と課題は、今後の地方都市の活性化を考える上で、貴重な示唆を与えてくれるでしょう。 このプロジェクトが今後どのように発展していくのか、注目が集まります。

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