くま川鉄道湯前線

くま川鉄道湯前線：人吉盆地を繋ぐローカル線の魅力と歴史

熊本県人吉市の人吉温泉駅から球磨郡湯前町の湯前駅までを結ぶくま川鉄道湯前線は、全長24.8kmのローカル線です。かつては九州旅客鉄道（JR九州）の特定地方交通線として運行されていましたが、1989年に第三セクター鉄道であるくま川鉄道へと転換されました。人吉盆地の東西を結ぶ重要な交通手段として、地域住民の生活を支え、近年は観光客にも注目されています。

路線概要と特徴

湯前線は、全線単線非電化で、14駅が設置されています。タブレット閉塞式とスタフ閉塞式を併用する閉塞方式や、ATS-SK保安装置など、安全運行のための設備も整っています。最高速度は85km/hですが、観光列車などでは速度を落として運行されます。

沿線には複数の高等学校があり、通学利用が全体の約8割を占めるなど、学生の通学に大きく貢献しています。しかし、近年は輸送人員の減少傾向にありました。2017年度に沿線の県立多良木高等学校が募集停止になったことを受け、多良木町や湯前町からの通学利用が人吉温泉駅方面へ増加し、定期利用者数は増加傾向に転じました。

運行形態と観光列車

JR九州時代には、八代駅までの肥薩線直通運転や急行「くまがわ」の運行もありましたが、現在はすべて線内折り返し運転です。1～2時間毎に1本程度の運行頻度で、日中は並行するバス路線の方が本数が多いのが現状です。かつては快速列車も運行されていましたが、現在は各駅停車となっています。1両編成の列車はワンマン運転、2両編成以上は車掌が乗務します。

2009年から2020年までは観光列車も運行され、多くの観光客に利用されてきました。個性的な車両デザインや沿線の風景を楽しむことができる観光列車は、地域活性化にも貢献しました。現在は定期運行は終了し、貸切や団体利用での運行となっています。

歴史と災害

湯前線は1924年に開業し、その後も駅の新設や改称などが行われてきました。歴史の中では、貨物輸送の廃止や、線路陥没、橋梁崩落など、様々な出来事がありました。特に1970年の貨車暴走事故や、1995年、1996年の線路陥没・築堤崩壊事故などは、運行に大きな影響を与えました。

近年では、2020年7月の令和2年7月豪雨により甚大な被害を受け、球磨川第四橋梁など多くの設備が流出・浸水し、全線不通となりました。その後、復旧作業が進められ、2021年11月には一部区間で運転が再開されましたが、全線復旧には未だ時間がかかると見込まれています。

駅と文化財

湯前線には14駅があり、そのうち5駅は有人駅です。各駅停車で、すべての駅で乗降できます。また、沿線には多くの橋梁や駅舎など、歴史的価値の高い建造物が残されており、国の登録有形文化財にも指定されているものもあります。これらの文化財は、湯前線の歴史と魅力を物語る貴重な資産となっています。

まとめ

くま川鉄道湯前線は、地域住民の生活を支えるだけでなく、観光資源としても魅力的なローカル線です。歴史、自然、そして人々の暮らしが織りなす風景は、多くの観光客を惹きつけます。豪雨災害からの復旧も進められており、今後の発展が期待される路線です。 今後の復旧、そして地域の活性化に期待がかかります。

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