くろよめ

『くろよめ』は、日本の漫画家かずといずみが手掛けた作品です。

概要

本作は元々、作者がかずといずみ名義で同人誌として発表していたシリーズを商業単行本としてまとめたものです。同人誌版と単行本版では、キャラクターの誕生日などの設定に一部違いが見られますが、これは単行本収録にあたって修正が加えられたためであり、作者自身は単行本版の設定を正式なものとしています。

単行本版は、同人誌版の内容に加筆・修正を施した「くろよめ」編と、物語の舞台となる会社が設立された後の出来事を描く「めとらば」編からなる二部構成となっています。作品名の由来について、作者は同人誌版および単行本の後書きで、個人的には「黒タイツをはいた嫁」の略称だと述べていますが、これはあくまで非公式なものであり、正式な作品名は『くろよめ』です。したがって、作中に登場する一部のキャラクターが過去にレディースだった経歴、いわゆる「黒歴史」を指すものではありません。

物語の正確な時代背景は作中で明示されていませんが、描写から2005年の年末から2006年の春にかけての出来事であると推測されます。

ストーリー

くろよめ編
老舗菓子メーカーで働く35歳の独身女性、池田光子は、仕事も家事も完璧にこなす敏腕キャリアウーマン。友人であり同僚の武内真子と共にクリスマスの夜に飲み歩いていた光子は、ふとした弾みで「嫁が欲しい！」と叫びます。翌日、二日酔いに悩まされる光子の部屋に見知らぬ美少女がいました。彼女は自らを「夜芽（よめ）」と名乗り、『世界嫁派遣協会』から派遣されてきたと言います。光子には前夜の記憶がありませんでしたが、後から訪ねてきた真子もまた、「羽似（はにー）」と名乗る「嫁」が自分の元に来たと話します。

めとらば編
「めとらば」編は、「くろよめ」編で設立される有限会社「めとらば」が舞台となります。大木賞を受賞して注目を集める美人作家、藤沙々（本名：藤原沙々子）は、祖父から譲り受けた洋館で一人暮らしをしていますが、その優雅な外見とは裏腹に家事が全くできず、部屋は荒れ放題でした。多忙な執筆活動と取材対応に追われ、片付けもままならない中、彼女は「めとらば」の「嫁」派遣サービス広告を目にします。掃除を依頼する目的で「めとらば」と契約した沙々子の元に、和服姿の美少女「奥小桃」が派遣されてきます。小桃は落ち着いた雰囲気で、家事を始めとした身の回りの世話全てを完璧にこなす「嫁」でした。小桃の働きによって執筆に専念できるようになった沙々子は次々とヒット作を生み出し、さらに多忙になります。しかし、度を超えた多忙さから小桃に小説の代筆を頼もうとし、それを断られた際に些細な誤解から契約を解除してしまいます。その後、別の家政婦を雇うもののうまくいかず、思い悩む中で小桃が自分を主人公に書いた小説を見つけ、小桃にとって自分の小説がどれほど特別な存在であったかを知ります。小桃に謝罪するため「めとらば」を訪ねた沙々子は、小桃が派遣されている北海道へ向かい、再会を果たして和解します。小桃の北海道での契約期間満了後、二人は改めて契約を結び、共に暮らすことになります。

主な登場人物

池田光子
「くろよめ」編の主人公。35歳。老舗菓子メーカー勤務のキャリアウーマン。仕事、家事ともに完璧ですが、幼少期の経験から「仕事」として向けられる優しさを嫌う一面も持ちます。当初は良芽を警戒しますが、彼女の過去を知って協力関係に。後に会社を退職し、真子と共に有限会社「めとらば」を設立。営業・経理・教育係を担当し、良芽と同居します。
鈴木良芽（夜芽）
「世界嫁派遣協会」から光子のもとに派遣された17歳の美少女。黒タイツを着用。その可憐な外見に反して、元レディースの総長という過去を持ちます。真子に助けられ「嫁」となりました。本名は「良芽」ですが、当初は暴走族の当て字に倣い「夜芽」と名乗っていました。後に光子と同居し、「めとらば」の設立後は光子の「嫁」として傍らで雑務もこなします。家事は当初全くできませんでしたが、驚異的な速度で習得し、新人の教育も担当するようになります。
武内真子
35歳。光子の友人であり同僚。天真爛漫な性格のキャリアウーマンです。かつてレディースを立ち上げた初代総長であり、数代後の総長である良芽からも頼りにされています。光子の「嫁が欲しい」という言葉をきっかけに『世界嫁派遣協会』を設立し、良芽らをスカウト。光子を組織運営のモニターとして利用しました。真子自身も「羽似」という少女を「嫁」として傍に置いています。「めとらば」編に登場する奥小桃は親戚にあたります。後に光子と共に会社を退職し、「めとらば」の代表取締役に就任しますが、多忙により自らも「嫁」として派遣される事態となります。
羽似
真子の傍にいる美少女。「真子の嫁」とされていますが、実質的には秘書のような役割を担っています。年齢は不詳ですが、良芽と同世代と見られます。落ち着いた雰囲気ですが、真子や良芽と同じく元レディース出身であるという裏設定があります。名前は偽名であり、本名は非公開。作中では経歴のほとんどが謎に包まれています。
藤原沙々子（藤沙々）
「めとらば」編の主人公。30代。大木賞を受賞した人気女流作家。良家出身で洋館に住んでいますが、家事は壊滅的に苦手です。多忙な日々の中で「めとらば」と契約し、小桃と出会います。小桃との関係を通して、自身の仕事や生き方に向き合うことになります。
奥小桃
「めとらば」編に登場する「嫁」。和服を普段着とする古風な雰囲気の美少女。年齢は不詳で良芽や羽似と同世代と見られます。真子の親戚にあたり、実家は古書店を営む良家。幼少期に病気を理由に離れに閉じ込められ、本の世界に没頭しました。沙々子の小説に触れたことが引きこもりから立ち直るきっかけとなり、「めとらば」で「嫁」として働く中で沙々子に派遣されます。家事能力は非常に高く、「めとらば」の中でも特に優秀な「嫁」として知られています。真子の方針で「嫁」の多くは元レディースですが、小桃は例外的に異なる経歴を持ちます。

書誌情報

かずといずみ 『くろよめ』 芳文社〈まんがタイムKRコミックス つぼみシリーズ〉、全1巻
2011年2月12日発売、ISBN 978-4-8322-7992-6

関連作品

作中の「めとらば」編における、屋敷に住む主人公とメイド（あるいはそれに近い立場の人物）の関係性は、森薫の『シャーリー』や長田佳奈の『うちの小さな女中さん』といった他作品の設定と類似性が指摘されています。

もう一度検索