ぐんま昆虫の森

ぐんま昆虫の森

ぐんま昆虫の森は、群馬県桐生市に位置する県立の昆虫施設です。条例上の正式名称は「群馬県立ぐんま昆虫の森」と定められており、一般には「昆虫の森」の愛称で親しまれています。日本の昆虫施設としては、教育委員会が運営する唯一の例として知られています。広大な敷地は約48ヘクタールに及び、昆虫の観察施設としては国内最大級の規模を誇ります。

敷地内には、かつての日本の里山を再現した多様な環境が広がっています。クヌギやコナラが茂る雑木林、清らかな水の流れる小川、稲が植えられる田畑などが復元されており、訪れる人々は豊かな自然に触れることができます。この里山環境には、現在までに1400種類を超える昆虫と、およそ80種類の鳥類が生息していることが確認されています。夏にはカブトムシが樹液を吸う様子や、オオムラサキが優雅に舞う姿など、様々な昆虫の生態を間近で観察することが可能です。

この施設の整備は、不二山周辺の自然豊かな地域を生かす構想に基づき進められました。1996年には、この地域を四つのゾーンに区分し、それぞれの環境を保全しながら、野生の生物観察や里山の暮らしに関わる体験学習、そして中心施設である「昆虫観察館」の建設が計画されました。1997年に発表された基本計画では、学校活動などの一環として昆虫採集が許可されることとなり、ただし採集した昆虫は元の場所に戻すというルールが定められました。

施設の整備は1999年に着手されました。その過程で、明治初期の茅葺き屋根民家を移築した建物が2001年に火災で損壊し、修復のため一部利用開始が延期されましたが、2002年6月に民家周辺エリアの利用が始まりました。施設の中心となる「昆虫観察館」は、安藤忠雄建築研究所が設計を手がけ、約44億円をかけて2004年に完成しました。2005年8月1日に施設全体が全面オープンし、不二山沼、雑木林、桑畑、水田（水田は非公開）の四つのゾーンが整備されました。初代園長は矢島稔氏が務めました。

昆虫観察館では、自然観察、里山生活体験、館内体験など、年間を通じて多様なプログラムが実施されています。また、別棟には図鑑や専門誌などを備えた図書室（フォローアップ学習コーナー）があり、学習を深めることができます。フィールド上には、移築された茅葺き民家もあり、昔ながらの生活空間を見学できます。

近年では、2022年から2023年まで命名権が導入されたり、2023年から2024年初頭にかけては『王様戦隊キングオージャー』とのコラボ企画が実施されたりするなど、話題を提供しています。毎年夏には、人気の特別展「カブト・クワガタ展」が開催されています。

運営に関しては、西表島の自然環境を再現していることについて、周辺の自然との関連性から議論が提起されたことがあります。当時の園長は、身近な自然との比較を通じて違いを実感し、新たな視点を得てほしいという意図を説明しています。また、施設の整備に約73億円という多額の費用が投じられ、年間約3億円の赤字が予想されるという財政状況に対する批判も存在します。これに対し、県側は、本施設は単なる採算施設ではなく、総合的な学習の場としての役割を重視しているという立場を示しています。

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