けずり花

けずり花：仙台の春を彩る伝統の供花

けずり花とは、主に東北地方、中でも仙台とその近郊で春の彼岸の頃に墓前に供えられる木製の造花です。鮮やかな色彩と独特の形状が特徴で、仙台の春の風物詩として親しまれてきました。

歴史

けずり花の起源は、花の少ない季節に墓前を飾るための代用品として作られたことにあります。かつてはネコヤナギや、枯れ枝に白い紙を貼ったものが使われていましたが、明治時代に入り、伊達藩の御殿医であった小野木多利治が考案したけずり花が広まっていきました。

明治10年頃に売り出された当初は、仙台市宮城野区榴岡にあった高橋生花舗でのみ製造・販売されていました。その後、着色されたけずり花が見瑞寺で供えることが認められたことをきっかけに、近隣の寺院へと急速に普及しました。それまで白い花しか供えることができなかった寺院でも、赤い花が供えられるようになったのは、けずり花の影響があったと言われています。

製法

けずり花は、太さ10cm程度のコシアブラの木を根元を残して削り、柘植の小枝に挿して作られます。削った部分の先端を赤や黄色に染め、花のように見立てます。その製法は、米沢市の笹野一刀彫と共通する点があると言われています。

現在の状況

近年では、生花が季節を問わず手に入るようになったことや、着色された塗料が墓石を汚すといった問題から、けずり花の需要は減少傾向にあります。2000年頃から販売数や生産数、流通量が減少し、一般的な生花店での取り扱いも少なくなっています。かつては農家の冬の副収入として広く生産されていましたが、専門の生産者がいないこともあり、現在では入手が困難になっています。

関連項目

笹野一刀彫
彼岸
墓

外部リンク

『削花』 - コトバンク
『削り花』 - コトバンク
『蓍に削り花』 - コトバンク
* 高橋生花舗フラワーゼーレ

けずり花は、時代の変化とともにその姿を変えつつありますが、仙台の春を彩る伝統文化として、その美しさは今も人々の心を魅了し続けています。

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